「学び合いの会-海外ニュース」 378号(170207

 

 主の平和

 

教皇を批判するバーク枢機卿の仲間と、マルタ騎士団の問題は

欧米のメディアの注目を集めていますが、今回もこれに触れた

記事をご紹介します。

また、今日のニューズウイーク日本版に、この対立の事情を詳し

扱ったロイターの記事の翻訳が出ましたので、「参考記事」として

仲間うち限定で添付します。

 

添付記事

1. 誰が、どんな真実の色を示しているか? (NCR) 

2. ローマ法王とマルタ騎士団、「対立」の舞台裏(ロイター)

 

 

 

誰が、どんな真実の色を示しているか?

フィリス・ザガーノ 2017/1/23  NCR

  

レイモンド・バーク枢機卿(中央左)

教皇と共に、201592

バチカン、聖ペトロ広場での教皇一般謁見。

 

 

 

 

海を行く船は、どれもが自分の色――旗の色—―を掲げて、他の船に自分の帰属すなわち敵か味方かを知らせている。海賊船は、しばしば偽りの旗を掲げて接近し、攻撃範囲に入って初めて本当の色――白黒のドクロと骨――を掲げる。

 

教皇の使徒的勧告「愛のよろこび」をめぐって波紋を拡げた4人の枢機卿仲間を思い起こして欲しい。その4人とは――ワルター・ブランドミュラー・88才、カルロ・カッファラ・78才、ヨアヒム・マイスナー・83才の3人と、彼らが追従する「緋色」の旗の主、前の使徒座署名院最高裁判所前長官のアメリカ人レイモンド・バーク68才である。バーク枢機卿は、今度はマルタ騎士団の問題で再び教皇を攻撃している。

 

バーク枢機卿は今や、本当の色を露わにしている。すべては、黒か白か、なのだ。バーク枢機卿による教皇攻撃は、次の二つの主張に帰着する。「わたしはあなたより賢い」、そして「わたしはあなたの権威を否定する」である。

 

以下に経緯を記す。

 

1.「愛のよろこび」

2016319日の家庭生活と結婚に関する使徒的勧告は、家庭生活の喜びと困難を乗り越える道を詳細に説明している。8章では、離婚して、まだ結婚が無効になっていないのに結婚したカトリック信者の問題を扱っている。そこで何を教えているのか?基本的な指示は、「自分の司牧者・指導者と相談しなさい。」ということになる。教皇フランシスコは何もかもが明快に黒白つけられるとは限らないと指摘する。すべての状況は、人間の弱さが持つ複雑性の反映である。結婚が破綻する。配偶者は見捨てられる。薬物、アルコール、ギャンブル依存、そして子供を持てない隠れた事情、子供を持ちたくない事情が、夫婦の一方または双方を離別へと向かわせる。過失の無い離婚に対して、カトリック教会が今できる身近な手段は、「婚姻無効手続き」であり、先に挙げた事情は、そのような判断(手続き)の根拠となり得る。201512月に改正された「婚姻無効手続き」は、破綻した結婚で傷ついたカップルにとって、手続きが少し容易になり、費用の軽減、時間の短縮など、頭の痛い問題が減ることになった。「愛のよろこび」が教えているのは、たとえ書類手続きが終っていなくても、破綻したカップルを認め、受け入れるにはどうしたら良いかについてである。これこそが、4人の枢機卿を不安に陥れ、バーク枢機卿をして「正式な訂正案」を出すと脅しをかけるまでに至らせた点なのだ。この使徒的勧告が重要視しているのは、或る人(おそらくは教会法の専門家)が再婚者に聖体拝領を許可する以前に、その人に求められる司牧的識別と優れた良心なのだ。いくつかの司教協議会――とりわけ、アルゼンチンやドイツ、マルタでは、既に第8(訳注:離婚し再婚した人に触れている章)の解説が行われている。その一方で小規模なウェブサイトでは、「伝統主義」のブロガーたちが、白黒の議論を繰り返すことで倫理神学への無知をさらけ出したり、教皇を公然と侮辱したりしている。

 

2.「マルタ騎士団」

今も活動を続ける団体で、その歴史は十字軍の手助けをした11世紀の騎士団に遡る。そのモットーは、「信仰を護り、貧しい人々を助ける」(Tuitio Fidei et Obsequium Pauperum)である。妙な話だが、彼らはこれが教皇と議論するという意味と受け取っているようなのだ。彼らは「伝統主義」のブロガーの広がりと自分らの緋色の旗に勢いを得て、教皇座から遠ざかろうとしている。そして、彼らの後ろ盾として本来なら教皇庁との間を取り持つべき立場にあるのがバーク枢機卿である。騎士団のNo.1と目されるバーク枢機卿は、昨年のクリスマス直前――教皇の要求だと詐称して――No.2の騎士をクビにした。

その理由は? 3年前、このNo.2は、圧倒的に仏教徒の多いミャンマー(ビルマ)の極貧地域に対する三つの援助計画のうち、二つを打ち切りにした。その計画はどうやらコンドームの提供を含んでおり、提供先は性産業との報告もあるプログラムであった。No.2は、残る3番目のプログラムを騎士団の倫理委員会に諮った。委員会が下した裁定は、「そのままにしておくように」であった。多分、倫理委員会は教皇ベネディクト16世のコンドームに関するコメント――コンドームは男娼が病気を蔓延させるのを防ぐのに役立っている――というくだりを念頭に置いていたのかも知れない。

これが本当の筋書きだろうか? No.2の騎士は、おそらく多くの事柄で教皇の考え方に賛同していると思われる。一方、バーク枢機卿と彼に従う人々はそうではない。教皇は、この件に関する調査を行う委員会を指名した。しかし騎士団は、自分たちの色合いを示す「白か黒か」の旗を掲げて、教皇の委員会への協力を拒んだ。なんとも見苦しい話だ。

 

バーク枢機卿を迎えたマルタ騎士団の騎士たちは、初めは枢機卿の色である緋色の旗をはためかせて船出した。そして今はその正体を表す色、すなわち何事も「白か黒か」峻別する旗を掲げている。

 

一方、白と黄色の教皇旗に従う者たちの色は、黒と青に変わってきている。イエスのように。

 

(以上)

 

〔フィリス・ザガーノ:NY・ハムステッド、ホフストラ大学主任研究員。〕

 

https://www.ncronline.org/blogs/just-catholic/whos-showing-whose-true-colors


 

 

Who's showing whose true colors?

Phyllis Zagano  |  Jan. 23, 2017 Just Catholic

 

Every seagoing ship flies its colors — its flag — so other vessels can identify friend or foe. Pirates often displayed false flags, only showing their true colors — black and white skull and bones — when they were close enough to attack.

 

Remind you of the gang of four cardinals stirring a hornet's nest about Amoris Laetitia? The four — Walter Brandmüller, 88, Carlo Caffarra, 78, Joachim Meisner, 83 — seem to be following the scarlet flag of American Raymond Burke, 68, ex-head of the Apostolic Signatura lately attacking again, this time over at the Knights of Malta.

 

Burke's now showing his true colors: everything is black and white. His concurrent attacks on the pope reduce to two statements: "I'm smarter than you," and "I deny your authority."

 

Here are the details.

 

1.  Amoris Laetitia. The March 19, 2016 apostolic exhortation on family life and marriage is a detailed walk through the joys and troubles of family life. Its Chapter 8 addresses questions surrounding divorced and remarried Catholics, not yet annulled. What does it teach? Well, basically: talk with your pastor. Francis reminds us that everything is not always black and white. All situations reflect the complexities of human frailty. Marriages fail. Spouses are abandoned. Addictions to drugs, alcohol or gambling, as well as hidden inability or unwillingness to have children, can cause one or both spouses to leave. The closest thing the Catholic church has to no-fault divorce is annulment, and any of the above conditions can support such a judgement. The new December 2015 annulment procedures make things a little easier: less cost, less time, less heartache for the hurting spouses of broken marriages. What Amoris Laetitia teaches is how to recognize and accept a null marriage, even before the paperwork is finished. That's where the four cardinals get themselves into a swivet, with Burke even threatening to produce a "formal correction." The exhortation focuses on pastoral discernment and good conscience, before someone (that would be a canon lawyer) says it's OK for people in second marriages to go to Communion. Some bishops' conferences, notably in Argentina, Germany and Malta, have already explained Chapter 8, even as small-circulation "orthodox" bloggers display their ignorance of moral theology and outright disdain for the pope by continually arguing for the black and white.

 

2.  Knights of Malta. The contemporary group, descended from the 11th-century knights who helped the crusaders, has as its motto: "Tuitio Fidei et Obsequium Pauperum" (Defense of the Faith and Assistance to the Poor). Oddly enough, they seem to think this means arguing with the pope. Egged on by the same echoing "orthodox" bloggers and under their own red flag, they are distancing themselves from the chair of Peter. Their cardinal patron, who is supposed to manage their relations with the Holy See, is Burke. Just before Christmas, Burke looked on as the No. 1 knight — falsely claiming he followed the wishes of the Holy See — fired the No. 2 knight. The alleged reason? Three years ago No. 2 knight ended only two of three aid programs in desperately poor areas of predominantly Buddhist Myanmar (Burma), programs that somehow included distribution of condoms, some reportedly to sex workers. No. 2 knight put the third program before the Knights' ethics committee, which ruled: let it be. Maybe they remembered Pope Benedict's condom comments, the part about how condoms could help male prostitutes avoid spreading disease. The real story? No. 2 knight probably agrees with the pope in many matters; Burke and his followers do not. The pope appointed a commission to investigate, but the Knights have raised their own black and white colors and refuse to cooperate with the pope's commission. It is all so very tacky.

 

Burke and the Knights sailed flying cardinal red. They are now showing their true colors: everything is black and white.

 

Meanwhile, the suffering followers of the white and yellow papal flag are turning black and blue. Like Jesus.

 

[Phyllis Zagano is senior research associate-in-residence at Hofstra University in Hempstead, N.Y. Her most recent books include The Light of the World: Daily Meditations for Advent and Christmas, Women Deacons?: Essays with Answers and In the Image of Christ: Essays on Being Catholic and Female.]

 

https://www.ncronline.org/blogs/just-catholic/whos-showing-whose-true-colors

 

 

参考記事  特別リポート: ローマ法王とマルタ騎士団、「対立」の舞台裏

ニューズウィーク日本版 20170207日(火)(ロイター)

 

 

[バチカン市国 1/28 ロイター] - 124日の午後、ローマ市中にある16世紀様式の宮殿から黒のBMWが滑り出て、ティベル川を渡ってバチカンに向かった。ローマ法王フランシスコの権威に対する大胆な挑戦を終わらせるための短い旅である。

 

車中には67歳の英国人マシュー・フェスティング氏の姿があった。はるか昔から続くカトリック系の騎士修道会で、現在は外交上で独特の地位を保ち、世界的な慈善活動に従事するマルタ騎士団の総長である。

 

フェスティング氏は辞任しようとするところだった。聖地エルサレムにおいて巡礼者のための医療支援を提供する趣旨で1048年に設立されたマルタ騎士団の総長が、終身ではなく生前に退任するのは数世紀ぶりである。

 

騎士団の運営をめぐって、フェスティング氏と改革派の法王フランシスコとのあいだの対立が衆目を集めており、今回の辞任は、そうした対立に終止符を打つことが狙いだ。

 

法王フランシスコは12億人の信徒を抱えるローマカトリック教会の近代化を進めているが、フェスティング氏との数週間にわたる対立は、そうした法王の努力に対する内部からの最大の抵抗の1つとなった。

 

焦点となっているのは、ミャンマーにおけるマルタ騎士団による援助事業の1つでコンドームの配布が判明したことに対する騎士団の対応だ。騎士団は、コンドーム配布に関する責任者だった外務総官のアルプレヒト・フライヘル・フォン・ベーゼラガー氏を解任。今回の取材について同氏からのコメントは得られなかった。

 

コンドームの使用はカトリックの教義に反しているが、ローマ法王庁(バチカン)はベーゼラガー氏の解任に関する調査を指示。その後、調査への協力を拒否したフェスティング氏を、バチカンは公然と非難している。

 

かつてサザビーのオークション担当者だったフェスティング氏は、調査拒否を撤回し、法王フランシスコの私邸において自筆の辞職願を提出した、とバチカン上層部の関係者は明らかにした。「大公」の称号を持つフェスティング氏に対し、ロイターはインタビューを申し入れたが、断られた。

 

だが、フェスティング氏の辞任は、対立を沈静化させるどころか、法王フランシスコの権威に対する新たな挑戦を招いた。バチカンとマルタ騎士団の関係者によれば、その主役は、活発に法王批判を行っている米国のレイモンド・レオ・バーク枢機卿であるという。

 

具体的にはどういうことか。

 

関係者によれば、バーク枢機卿はフェスティング氏に辞任を撤回し法王との戦いを続けるよう説得しようとしたという。だが21日、マルタ騎士団の政務評議会はフェスティング氏の辞任を承認し、ベーゼラガー氏を復帰させた。明らかにバーク枢機卿の敗北である。本記事に関してバーク枢機卿のコメントは得られなかった。

 

バチカンの内部関係者によれば、今回の対立は、法王就任からほぼ4年が経過した今でも、依然として法王フランシスコがローマカトリック教会における権力基盤強化に苦心していることを示している。

 

関係者はさらに、今回の対立は、コンドーム配布をめぐる議論にとどまらず、教会内の保守派と、法王の改革志向を支持する進歩派との分裂が続いていることを物語っているという。

 

法王フランシスコは、カトリック教会が従来の教条主義を抑え、同性愛者や離婚経験者など、教会から排除されていると感じている人々も歓迎するようにしていきたいと努力している。

 

「今回のゴタゴタはすべて内部の問題であり、そのように扱われるべきだったかもしれないが、保守派と進歩派の分裂を示す対立に変質してしまった」と法王フランシスコに関するいくつかの著書があるアンドレア・トルニエリ氏は語る。

 

今回の対立と法王による権力基盤強化の取り組みについて、バチカンからのコメントは得られなかった。

 

バチカンはロイターの取材に対し、2つの公式声明を参照するよう指示している。1つは12月22日付けで、ベーゼラガー氏解任についての調査を命じるバチカンからの指示に関するものだ。もう1つは1月17日付けで、マルタ騎士団のウェブサイトでフェスティング氏がバチカンによる調査に協力しないよう要請したことを受けたもので、フェスティング氏の抵抗を批判し、騎士団のメンバーに対し協力するよう指示している。

 

<ドイツ貴族>

 

マルタ騎士団のトップ幹部は全員男性で、聖職者ではないが、清貧、貞潔、そして法王への服従という誓願を行っている。

 

べーゼラガー氏はドイツ貴族の家柄であり、その父親は第2次世界大戦中、失敗に終わったヒトラー暗殺計画に参加している。ベーゼラガー氏は12月、マルタ騎士団のグローバルな人道支援事業を統括しているときにコンドームの使用を許可したことを非難され、フェスティング氏に解任された。

 

騎士団やバチカンの関係者によれば、フェスティング氏はバーク枢機卿立ち会いのもとで、ベーゼラガー氏が外務総官に指名された際に、コンドーム使用を許可したことを騎士団の幹部たちに隠したと主張して、ベーゼラガー氏を解任したという。

 

この解任は、ただちに騎士団指導部とバチカンのあいだに対立を引き起こした。

 

敬虔なカトリック教徒であるベーゼラガー氏は、1223日の声明で、自分は完全にカトリック教会の教えに従っていると述べた。コンドーム配布が発覚したため、開発途上国における2件の事業を中止したが、もう1件のミャンマーにおける事業については、中止してしまうと、貧困層に対する基礎医療サービスの提供がすべて唐突に終了してしまうとの理由で継続した。

 

カトリック教会は産児制限の手段としてのコンドームの使用を認めておらず、禁欲と一夫一妻制の異性間結婚がエイズ蔓延を防ぐ最善の手段だとしている。

 

ベーゼラガー氏は上述の声明のなかで、フェスティング氏とバーク枢機卿から、バチカンが彼の辞任を望んでいる、辞任しなければマルタ騎士団にとって「深刻な結果」を招くだろうと言われたとしている。

 

バチカンの国務長官から騎士団に宛てた書簡をロイターが閲覧したところ、バチカンはベーゼラガー氏の辞任を命じたことを否定しており、騎士団に対して、法王が対話による解決を望んでいると伝えている。

 

ベーゼラガー氏は、今回の解任は騎士団の憲章に違反しているとして、法王に上訴し、調査の命令を引き出している。

 

フェスティング氏は調査への協力を拒否し、一連の公式声明の語調は次第に強まっていった。ある声明で彼は、解任を調査する法王の諮問委員会は「法的に無効」と述べている。

 

騎士団のトップ幹部に宛てた114日付けの書簡をロイターが閲覧したところ、フェスティング氏は次のように書いている。「私がこの一団の人々の司法管轄権を認めないのは、騎士団の主権を守るためだ」

 

マルタ騎士団は主権実体としての地位を持っており、100以上の国及び欧州連合との外交関係を維持している。国際連合においても常任オブザーバーとしての地位を有する。

 

バチカン上層部の関係者によれば、法王はフェスティング氏の挑戦的な態度に立腹し、バチカンは騎士団に服従を命じる公式声明で反撃した。この公式声明の後、フェスティング氏の態度は軟化し、1週間後、法王私邸での辞任となった。

 

フェスティング氏の辞任は騎士団の多くの関係者に衝撃を与えた。ロイターの取材に対し、2013年の法王ベネディクト16世の退位に匹敵するショックだと語る関係者もいた。

 

ただし、4人の情報提供者によれば、騎士団メンバーの多くはフェスティング氏の辞任によって安堵したという。世界中の最貧困層の支援に当たっている団員13000人、ボランティア8万人、有給の医療スタッフ2万人を擁する騎士団にとって、今回の対立がイメージ低下につながることを危惧していたからだ。

 

バチカン及び騎士団の関係者によれば、フェスティング氏が法王に辞職願を渡した翌日、バーク枢機卿はバチカン近郊の自宅から騎士団の本部へと車を走らせ、フェスティング氏に辞任を撤回するよう説得を試みたという。バーク枢機卿はフェスティング氏との会談についてコメントを拒んでいる。

 

バーク枢機卿は以前から法王に対する抵抗の先頭に立ってきた。フランシスコ法王は2014年、公式には何の説明もなく、バーク枢機卿をバチカンの要職から外し、マルタ騎士団の「擁護者」に指名した。

 

こうした「擁護者」の地位は、もっと年長の枢機卿が75歳で引退した後に与えられるのが普通である。バーク枢機卿はまだ65歳であり、この降格人事は、法王の改革をバーク枢機卿がたえず批判していることに対する法王の苛立ちを示すものとの見方が広まっていた。

 

特にバーク枢機卿が反発したのは、法王フランシスコが、カトリック教会による婚姻無効の宣告を受けずに離婚・再婚した教徒に対して、聖体拝領の儀式への復帰を認めたことである。降格人事について、バーク枢機卿はコメントを拒んでいる。

 

降格以来、同枢機卿はますます保守派にとっての拠り所となり、世界中を飛び回っては保守派グループを相手に講演を行い、インタビューのなかで法王の決定を批判することも多い。

 

11月、バーク枢機卿は他の3人の枢機卿と一緒に、めったに見られない、法王に対する公然たる挑戦の先頭に立った。離婚した信徒の聖体拝領など重要な倫理上の問題について混乱を招いたとして法王を批判したのである。

 

その後バーク枢機卿は、あるインタビューのなかで、もし法王が彼らの書簡に対応しなければ、カトリック教会のために枢機卿ら自身が法王の行いを「正す」必要があるかもしれないと述べている。

 

バチカン側は当時、この反乱について何もコメントしなかったが、法王支持者の多くは4人の枢機卿を公然と批判している。

 

法王は、少なくともマルタ騎士団の新たな総長を決める選挙が行われるまで、騎士団の運営を支援するための「教皇使節団」を指名する予定である。

 

騎士団政務評議会に宛てた1127日付けの直筆の書簡をロイターが閲覧したところ、法王フランシスコは、バチカンは騎士団の主権に干渉する意図はないことを明言しつつ、使節団は「騎士団、特に誓願を行ったメンバーの崇高さを新たにすること」を求めるだろうと述べている。

 

(翻訳:エァクレーレン)

 

http://www.newsweekjapan.jp/headlines/world/2017/02/185833.php