「学び合いの会-海外ニュース」 366号(160905)
† 主の平和
来年は宗教改革500周年に当たり、教会内ではエキュメニカル
な動きが活発です。
ドイツ・カトリック司教団の最近の動きを伝えるCNS の記事を
仲間の翻訳でお届けします。
また、ご参考までにクリスチャン・トゥデイの記事と、本文中の
語句の注釈に代えてWiki の記事を文末に添えます。
添付記事
1. ドイツカトリック司教団、
宗教改革記念日前にルターの「証し」を称賛(CNS)
<参考記事>
-1 クリスチャン・トゥデイ 2016/8/14
-2 義認の教理に関する共同宣言について(Wikipedia)
ドイツカトリック司教団、宗教改革記念日前にルターの「証し」を称賛
2016年8月15日:CNS
ドイツの司教協議会は先週、宗教改革の影響に関する充実した内容のレポートを発表した。
ドイツカトリック司教団は、「福音の証し人、信仰の教師」としてプロテスタント改革の先駆けとなったマルティン・ルターを称え、プロテスタントとの絆を深めるよう呼びかけた。
「エキュメニカルな視点から見た宗教改革」と題した206ページに及ぶレポートの中で、ドイツ司教協議会のエキュメニカル委員会議長でマルデブルグ司教のゲルハルト・フィーゲ師は、「宗教改革の歴史は、カトリック教会の中で様々な受け止め方をされてきました。カトリック教会では、宗教改革とその主唱者たちを、長い間否定的に、軽蔑的に見てきました。」
「いまでも傷はまだまだ残っていますが、その間、カトリック神学が16世紀の出来事を真面目に再考するに至ったのは喜ばしいことです。」司教はレポートの中でこう述べている。このレポートは、ドイツのボンに本拠を置く司教協議会が8月9日に発表したものだ。
フィーゲ司教は、近づいた500周年記念行事の中で、宗教改革の「歴史とその結果」が論議されることになるだろうと述べたが、以前の激しい非難の応酬は根拠のないものであったという合意が存在していると付け加えた。
「宗教改革と、その結果である西欧キリスト教会の分裂の記憶は、未だに痛みの呪縛から逃れることが出来ません。」とフィーゲ司教は語る。「しかし、長年にわたるエキュメニカルな対話を通して、当時に始まった神学的相違は再評価を受けてきました。わたしたちのエキュメニカル委員会が作成したレポートもその点を記しています。」
マグデブルグ教区の報道官のマルティン・ラザールは、8月10日CNSに対し、宗教改革はドイツ国内で、特に「宗派の異なる家族の間で」未だに緊張関係を引き起こしていると語った。
司教団のレポートは、「カトリック教会はいま、宗教改革において何が重要であったのを認識すべきである。すなわち、聖書こそがすべてのキリスト者の生活の中心であり、基準であるという点である。」と述べている。
「これと関連するのが、人々の救いのためのイエス・キリストにおける神の自己啓示が、聖書の中で宣言されているというマルティン・ルターの基本的な洞察である。すなわち、イエス・キリストが聖書の中心であり、唯一の仲介者なのだ。」
宗教改革は、伝統的には1517年のルターの95箇条の論題の発表から始まるとされている。
この95箇条の論題は、贖宥状の売買と教皇の権威の聖書的裏付けに疑問を投げかけるものであった。ルターは1521年1月、教皇レオ10世によって破門され、教皇チャールズ5世によって追放された。
ドイツの司教団は、ルターを「宗教的パイオニア、聖書の証し人、そして信仰の教師」と評し、その「改悛と回心の刷新への思い」は、ローマで「適切な聴聞」を受けなかったと述べた。司教団は、この改革者の働きが今もなお「神学的、霊的課題」を投げかけており、「教会的にも、政治的にも、教会と教導権を理解するための示唆」を含んでいると指摘している。
このレポートは、アウクスブルグ信仰告白を記念した1980年のカトリックとルター派の共同声明が、両者をより近づけるのに極めて重要な役割を果たしたと述べている。アウクスブルグ信仰告白は、新たなルター派の信仰を提示したものである。またその一方で、1983年のルター生誕500周年記念日に別のエキュメニカルな声明が出され、それによってこの改革者の業績に関して「集中的な取り組み」が始まった。
訳注: アウクスブルグ信仰告白: カトリックの信仰宣言に相当するもので、1930年6月25日に発表されたプロテスタント最初の信仰個条。しかしカトリック側は受け入れなかった。
歴史的な、1999年の義認の教理に関する共同宣言は、「エキュメニカルな対話に向けた画期的なもの」であったとレポートは記している。そして、残された相違が「もはや、教会分裂のような影響を及ぼすことはない」と認めている。
訳注:「義認の教理に関する共同宣言」については文末の参考記事-2参照
司教団のレポートには、2015年6月にドイツ司教協議会会長のラインハルト・マルクス枢機卿と、ルター派で福音教会議長のハインリッヒ・ストローム司教の間で交わされた和解の手紙が盛り込まれ、2017年のエキュメニカルな聖地巡礼と、「癒しの記念」に捧げる四旬節の典礼に関する計画の概要が説明されている。
CNSとの会見で、エキュメニカル委員会副議長のハインツ・アルゲミセン司教(フルダ教区)は、「カトリックとルター派の絆は、第2バチカン公会議以来改善してきたが、両教会は、『相違点に関する和解に留まることなく、目に見える一致』に向けて共に働かなければなりません。」と語った。
「これは、ただ共に祈るだけでなく、(過激な)イスラム教徒は勿論、攻撃的な無神論者や世俗主義者からの挑戦を受けるとき、わたしたち皆がキリスト者として一つの声で語り、困難を乗り切るということをも意味しています。そうしなければ、わたしたちは次第に押されて、ますます地歩を失って行くことになるでしょう。」と司教は言う。
そして、「宗教改革を記念するにあたり、わたしたちはそれを単なる記念行事と見なしてはなりません。そうではなく、過去の誤りに対するわたしたちの罪を認め、過去の500年を双方が反省しなければならないのです。」と付け加えた。
ドイツのカトリック信者は、現在、8500万人の国民の29パーセントを占める。一方、福音教会は27パーセントを数えるが、すべての宗派が信者数の減少に直面している。
(以上)
<参考記事-1> Christian Today 2016/8/17
ルターの宗教改革から499年 プロスタントとの一致探るカトリック教会
2017年に宗教改革500周年を迎えるのを記念して、ドイツでは、カトリック教会の司教らがプロテスタント教会と接触を図っている。
司教らは、カトリック教会とルーテル教会間の重要な神学論争にも触れながら、ドイツ宗教改革の生みの親、マルティン・ルターについて、新しく発表した報告書の中で熱く語っている。
ドイツ・マクデブルク教区のゲルハルト・フィーゲ司教は、「聖書が全てのキリスト教徒の生活の中心であり基準である、という宗教改革における重要事項を、今日ではカトリック教会も認識しています」と述べている。この認識が、カトリックとプロテスタントの分裂の主要な論争の1つになっていたことを考えると、これはカトリック側からの「オリーブの枝」(和解の印)といえる。
フィーゲ氏はまた、「このことに関連して、人間の救済のために、イエス・キリストの内に神が自己顕現されているというマルティン・ルターの基本的な見解は、福音書の中に明示されています。イエス・キリストは聖書全体の中心であり仲介者なのです」と言う。
聖書の役割と、人間と神との間を仲介する者はイエス以外にもいると考えるカトリック教会の理解は、何世紀にもわたってカトリックとプロテスタントの間を分ける2つの主要な境界線となっていた。
宗教改革500周年が近づくにつれ、エキュメニカルな努力がなされており、既に40年にわたって、カトリック教会とルーテル教会の間で、神学的、教義的な同意がなされてきている。そして今、双方の信徒を合わせると全ドイツ国民の半数以上にもなるという両教会は、一致を示そうと準備をしているようだ。
ルターの役割は重要だ。ルターはカトリックの司祭であったがために、ヴィッテンベルクの城教会の扉に「95カ条の提題」を打ち付け、異端者として非難された。今から499年前のこの出来事を記念する式典が来年に予定されている。現在ではこの提題は、ルターが「宗教的先駆者、福音の証人、信仰の教師」であることを示す文書となっている。
http://www.christiantoday.co.jp/articles/21741/20160817/catholics-seek-unity-with-protestants-499-years-reformation.htm
<参考記事-2> 義認の教理に関する共同宣言 (Wikipedia)
義認の教理に関する共同宣言(Joint Declaration on the Doctrine of Justification)とは、ルーテル世界連盟とカトリック教会が1999年10月31日に調印した義認についての共同の宣言である。
カトリック教会も信仰によって福音を理解することを公式に宣言した。
この宣言の2章「エキュメニカルな問題としての義認の教理」で、トリエント公会議による信仰義認主張者への断罪はルーテル教会に適用されず、またルターによる信仰義認否定者への断罪はカトリック教会に適用されないと定めた。
ルーテル教会内のリベラル派は、このことをもってカトリック教会が信仰義認の教理を自派に適用したと看做しているが、ルーテル教会内の保守派はそのような解釈を拒んでいる。
カトリック系南山大学のリチャード・ジップルは「論争に終止符か」と題し、好意的に評価しているが、日本ではほとんど報道されなかった。カトリック新聞1999年11月14日号では報道された。
カトリック東京教区エキュメニズム担当委員でカトリック木更津教会小林敬三神父は「世界エキュメニカル史上画期的出来事」と評価している。
2004年の宣言の出版を記念し、10月30日聖イグナチオ教会にて、カトリック教会とルーテル教会の合同礼拝が開催され、550名が出席した。合同礼拝の式順はルーテル教会式文に沿ったもので、歌はカトリック典礼聖歌であった。日本初の事例である。
なお2006年、世界メソジスト協議会は、この共同宣言を自派に適用することを決議した。
<書籍情報>
『義認の教理に関する共同宣言』
翻訳:ルーテル/ローマ・カトリック共同委員会、ローマ・カトリック教会、ルーテル世界連盟
発行:教文館 2004/10/3
GERMANY: CATHOLIC BISHOPS PRAISE 'WITNESS' OF MARTIN LUTHER AHEAD OF REFORMATION ANNIVERSARY
15 August 2016 | by Catholic News Service
The bishops' conference last week released a substantial report on the impact of the Reformation
Germany's Catholic bishops have praised Martin Luther, who started the Protestant Reformation, as a "Gospel witness and teacher of the faith" and have called for closer ties with Protestants.
In a 206-page report, "The Reformation in Ecumenical Perspective," Bishop Gerhard Feige of Magdeburg, chairman of the German bishops' ecumenical commission, said the "history of the Reformation has encountered a changeable reception in the Catholic Church, where its events and protagonists were long seen in a negative, derogatory light."
"While the wounds are still felt to the present day, it is gratifying that Catholic theology has succeeded, in the meantime, in soberly reconsidering the events of the 16th century," he said in the report, published last week (9 August) by Germany's Bonn-based bishops' conference.
Bishop Feige said the "history and consequences" of the Reformation would be debated during its upcoming 500th anniversary, but added that there was consensus that previous mutual condemnations were invalid.
"Memories of the Reformation and the subsequent separation of Western Christianity are not free from pain," Bishop Feige said. "But through lengthy ecumenical dialogue, the theological differences rooted in the period have been re-evaluated -- as is documented in the work presented by our ecumenical commission."
Martin Lazar, the Magdeburg diocesan spokesman, told Catholic News Service on 10 August that the Reformation still causes tensions in Germany, especially "in religiously separated families".
The bishops' report said the "Catholic Church may recognise today what was important in the Reformation - namely, that Sacred Scripture is the centre and standard for all Christian life."
"Connected with this is Martin Luther's fundamental insight that God's self-revelation in Jesus Christ for the salvation of the people is proclaimed in the Gospel - that Jesus Christ is the centre of Scripture and the only mediator."
The Reformation is traditionally dated from the October 1517 publication of Luther's 95 Theses, questioning the sale of indulgences and the Gospel foundations of papal authority. Luther was excommunicated by Pope Leo X in January 1521 and outlawed by Holy Roman Emperor Charles V.
The German bishops describe Luther as "a religious pathfinder, Gospel witness and teacher of the faith," whose "concern for renewal in repentance and conversion" had not received an "adequate hearing" in Rome. They said the reformer's work still posed a "theological and spiritual challenge" and had "ecclesial and political implications for understanding the church and the magisterium."
The report said a joint Catholic-Lutheran statement in 1980 commemorating the Augsburg Confession, which set out the new Lutheran faith, had been crucial in bringing churches closer, while another ecumenical statement in 1983, on the 500th anniversary of Luther's birth, had started an "intensive engagement" with the reformer's work.
A historic 1999 joint declaration on the doctrine of justification was a "milestone in ecumenical dialogue," the report said, by recognizing that remaining differences should "no longer have a church-dividing effect."
The bishops' report includes June 2015 conciliatory letters between the German bishops' conference president, Cardinal Reinhard Marx, and Lutheran Bishop Heinrich Strohm, president of the Evangelical Church of Germany, outlining plans for a 2017 ecumenical pilgrimage to the Holy Land and a Lent service devoted to "healing memories."
In an interview with CNS last week, the ecumenical commission's deputy chairman, Bishop Heinz Algermissen of Fulda, said Catholic-Lutheran ties had improved since the Second Vatican Council, but that churches must work for "visible unity, not just reconciled diversity."
"This means not only praying together, but meeting the challenge of speaking with one voice as Christians when we are all challenged by aggressive atheism and secularism, as well as by (radicalised) Islam. Otherwise we will lose more and more ground," he said.
"In commemorating the Reformation, we cannot just see it as a jubilee, but should also admit our guilt for past errors and repent on both sides for the past 500 years," he added.
Catholics make up 29 percent of Germany's 82 million inhabitants, with the Evangelical Church of Germany accounting for 27 percent, although all denominations have faced declining membership.
http://www.thetablet.co.uk/news/5996/0/germany-catholic-bishops-praise-witness-of-martin-luther-ahead-of-reformation-anniversary-