「学び合いの会-海外ニュース」 350号(160505)
† 主の平和
最近バチカンで開かれた「世界平和」を話し合う会議で、
従来カトリック教会が伝統的に遵守(保持)してきた
「正戦論」を退けるアピールが採択されました。
現地のメディアは、この動きに関連して教皇が世界平和
に関する回勅を出すのではないか、或いは、次のシノドス
のテーマを「世界平和」とするのではないか、といった推測
を伝えています。
NCRの記事を仲間が翻訳してくれました。
添付記事
1. 報告: 教皇、次回シノドスのテーマに
「世界平和」を考慮(NCR Today)
報告: 教皇、次回シノドスのテーマに「世界平和」を考慮
ジョシュア・マッケルウィー 2016/4/28 NCR Today
バチカン市発:カトリック教会が長く保持してきた「正戦論」(訳注1参照)の教えをはっきり否定した「first-of-its-kindバチカン会議」(訳注2参照)を受けて、教皇フランシスコが、非暴力についての教会の教えに新しい方向性を与える新しい回勅を出すのではないかという憶測が強まっている。
バチカンの有力枢機卿の一人であるピーター・タークソンは、この問題に関する一定期間の対話と討議を経た後のそのような回勅は「理にかなっている」とさえ発言している。
訳注1:「正戦論」 戦争を正当な戦争と不当な戦争とに区別して,正当な原因をもつ戦争だけを合法と認める理論。中世キリスト教神学者アウグスチヌス,イシドロス,トマス・アクィナスによってキリスト教教義と戦争とを調和させるための理論として展開され,近世初頭の自然法主義国際法学者 F・ビトリア,F・スアレス,A・ゲンチリス,H・グロチウスらによって一層法律的に発展させられた。(以上、ブリタニカ百科事典)
正戦論は、暴力の使用が道徳的に正当と認められるかどうかを一連の基準を用いて判断する伝統で、現在、カトリック教会の公式のカテキズムには四つの条件で概要が示されている。
訳注2:「first-of-its-kind assembly」 4月11日から14日にかけてローマで開かれた「非暴力と平和」を話し合う会議。(後述) バチカンの正義と平和評議会、パックス・クリスティ・インターナショナルなどの呼びかけで、暴力や不正義の問題に直面している世界各地の司教、司祭、修道会代表、神学者、信徒ら80余人が一堂に会した。「first-of-its-kind assembly」 という会議の名称は、このようなメンバーでこのようなテーマを話し合うのは「初めて」という意味が込められていると思われる。)そして14日、カトリック教会が長く保持してきた正戦論に関する教えを否定するアピールを発表した。
最近ではイタリアの有名新聞が、「教皇は、次の世界代表司教会議(シノドス)のテーマとして、世界平和の問題を取り上げたいと望んでいる」と報道している。 ANSA通信社によれば、シノドス評議会の最近の会合で、教皇フランシスコがこのアイディアを持ち出したという。
同通信社は、「教皇は、次のシノドスを平和というテーマに捧げたいと望んでいる」と伝え、その他の議案の中には、エキュメニズムや既婚司祭の可能性に関するテーマも含まれていると述べている。
「しかし、世界平和を進める強い主導権をどのように発揮するかは、教皇が今、何に一番関心を持っているかに懸っている。教皇は、長年他の諸宗教に対して、戦争には『永久にノー』と言える強い関わりを持つよう求めていく道を探ってきた。」と通信社は伝える。
シノドスは、特定のテーマに関して、カトリックの高位聖職者たちが一堂に会する世界規模の集まりで、通常3年か4年ごとに開催される。しかし、教皇は随時会議を招集することが出来、教皇フランシスコは2014年と2015年の2年連続で、家庭生活に関する2回のシノドスを招集している。
バチカンのシノドス事務局常設評議会は、4月18日~19日にローマで会合を持った。その会合の一部には教皇フランシスコが出席して、非公開で行われた。報道によれば、その場で次回のシノドスのテーマを何にするかを検討したということである。
最近行われた平和に関するバチカンの会議は、4月11日から14日にかけて、タークソン枢機卿が長官を務める教皇庁正義と平和評議会と、国際的なカトリック平和運動のグループであるパックス・クリスティ・インターナショナルが共同で開催したものである。
この催しに世界中から参加した80余名は、会議の終わりにはアピールを発表した。アピールでは、教会の正戦論は暴力紛争を正当化するために使われることがあまりにも多すぎたと指摘し、世界の教会に対して非暴力に関するイエスの教えを再検討するように求めた。
グループはまた、教皇フランシスコにも、このテーマに関して、教皇の教えの最高の形である回勅の公布を検討するよう求めた。
「パックス・クリスティの提案はとても理にかなっています。」と、タークソン枢機卿は会議の後の会見で述べた。「世界規模のカトリックのネットワークでは多くの意見が交わされていますが、これは大切な声の一つです。」
「教皇フランシスコは、第2バチカン公会議の教えに沿って、協働性の実現に努めています。捉われない、開かれた、適切で、心からの、幅広い討論を始めることがもっとも重要です。考えられる回勅は、それが多くの対話の実りであるときにだけ妥当なものとなります。対話の出発点というだけでは不十分です。」
シノドスの後に出される文書は、(家庭シノドスを受けて)最近出された教皇フランシスコの使徒的勧告「愛の喜び」(Amoris Laetiti)のように、一般的には回勅ではなく使徒的勧告が出されることが多い。
教皇フランシスコが主催した2014年と2015年の家庭シノドスは、広範な問題についての多岐にわたる議論と公開討論が特徴であった。議論のテーマの中には、分裂をもたらすほどの対立が明らかになったものもあった。
(以上)
Report: Pope considering global peace as topic of next Synod of Bishops
Joshua J. McElwee | Apr. 28, 2016 NCR Today
VATICAN CITY Following a first-of-its-kind Vatican conference that bluntly rejected the Catholic church's long-held teachings on just war theory, there has been much speculation that Pope Francis might choose to focus his next encyclical letter on reorienting the church's teachings on violence.
One of the Vatican’s top cardinals, Peter Turkson, has even said that such an encyclical is "plausible" following a period of dialogue and debate on the matter.
Now, a prominent Italian news agency is reporting that the pontiff wants to dedicate the next meeting of the world’s Catholic bishops to the issue of global peace. ANSA, a wire service, says Francis mentioned the idea at the recent meeting of the members of the organizing council of the Synod of Bishops.
"The pope would like to dedicate the next Synod of Bishops to the theme of peace," the service reported Wednesday, saying that other proposals for topics included ecumenism and the possibility of married priests.
"But how to develop a strong initiative in favor of global peace is what might most interest in this moment the pope, who has for a long time had in mind to find ways to address himself to other religions for a significant commitment capable of saying 'no for always' to war," stated the report.
A Synod of Bishops is a worldwide gathering of Catholic prelates on a specific theme, normally held every three or four years. But the pope can call gatherings as he wishes, as Francis did in 2014 and 2015, hosting two back-to-back synods on issues of family life.
The permanent organizing council of the Vatican’s synod office met in Rome April 18-19. Part of their discussions, attended by Francis and held behind closed doors, were reportedly on what topic to consider for the next gathering.
The recent Vatican conference on peace-making was held April 11-14 by the Pontifical Council for Justice and Peace, which Turkson leads, and the international Catholic peace group Pax Christi International.
The some 80 participants from around the world taking part in the event issued an appeal at the end of the conference, saying that the church’s just war teachings have too often been used to justify violent conflicts and calling on the global church to reconsider Jesus' teachings on nonviolence.
The group also called for Francis to consider writing an encyclical, the highest form of teaching for a pope, on the topic.
"Pax Christi's proposal is very legitimate," Turkson said in an interview following the conference. "In the worldwide Catholic network, it is an important voice among many."
"Pope Francis is working for collegiality, following the teaching of Vatican Council II," said the cardinal. "It will be of utmost importance to initiate a broad, open, qualified, deeply felt and widespread debate. A possible encyclical is plausible only as the fruit of much dialogue, not as a starting point."
While synods do not typically result in papal encyclical letters, they are often followed by publication of a papal apostolic exhortation, such as Francis’ recent exhortation Amoris Laetitia.
Both of the 2014 and 2015 family life synods hosted by Francis were noted for their wide range of discussion and public debate on many issues, some of which proved to be quite divisive.
[Joshua J. McElwee is NCR Vatican correspondent. His email address is jmcelwee@ncronline.org. Follow him on Twitter: @joshjmac.]
http://ncronline.org/blogs/ncr-today/report-pope-considering-global-peace-topic-next-synod-bishops