「学び合いの会-海外ニュース」 345-1号(160304)
† 主の平和
聖職者による児童虐待報道を扱った映画「スポットライト」が
今年度のアカデミー作品賞と脚本賞を受賞しました。
メディアはこのニュースを大きく取り上げましたが、バチカンの
意向を反映する新聞オッセルバトーレ・ロマーノは、この映画
をどちらかと言えば肯定的に評価しています。
今回はこの記事と、困窮者・移住者への援助と引き換えに
信仰を押しつけることを戒める教理省長官の談話記事の2つ
を添付します。
添付記事
1. 「スポットライト」は反カトリック映画ではない-バチカン紙
2. ミュラー枢機卿:「愛の目的は証しであり改宗ではない。」
(いずれもCNS - カトリック・ニュース・サービス)
注 このページには1.のみを掲載します。
以上
「スポットライト」は反カトリック映画ではない-バチカン紙
キャロル・グランツ CNS(カトリック・ニュース・サービス) 2016/2/29
バチカン市発(CNS) バチカン紙は、オスカー受賞の映画「スポットライト」が反カトリックではないと述べた。
「既報のように、これは反カトリック的映画ではない。この映画は警告と深い苦しみを巧みに表現している。ボストンで新聞記者たちの調査チームが聖職者による性的虐待を暴いたときに、カトリック信者たちはこの苦しみを経験したのだ。」と2月29日発行のオッセルバトーレ・ロマーノ紙は報じている。
同紙によれば、制作者のマイケル・シュガーが、「この映画が、はるかバチカンまで届くことを望んでいる」と述べたことも「好ましい兆候」だという。
2月28日に行われた第88回アカデミー賞授賞式における受賞スピーチで、シュガーは、この作品は「犠牲者の声を代弁するものであり、オスカー受賞によって一層その声が拡大するだろう。」と語った。そしてその声が「大きな響きとなって、はるかバチカンにまで届くよう望んでいる。」とも語った。
「教皇フランシスコよ、いまこそ子どもたちを保護し、信仰を回復させてほしい。」と彼は呼びかけた。
バチカン紙によれば、そのような呼びかけがなされたのは「好ましい兆候」である。なぜなら、それは「未だに教会組織への信頼と、前任者が着手した教会浄化の仕事を、教皇フランシスコが継続していることへの信頼がある」ことを示しているからだという。
「信仰は本来、犠牲者たちを保護し、罪なき者を守るはずのものである、という信頼は、いまも存在している。」と、この記事の筆者であるルチェッタ・シカラフィア(現代史の教授、バチカン紙の常連寄稿者)は記す。
映画「スポットライト」は今回、作品賞と脚本賞の二つのアカデミー賞を受賞した。この映画は、ボストン・グローブ紙が、ボストン大司教区の聖職者による児童虐待スキャンダルとその隠蔽行為を明らかにしていく経緯を伝えるドキュメンタリーである。
バチカン紙によれば、この作品は、当時教理省長官であったジョゼフ・ラッツィンガー枢機卿が、教会内の虐待問題に立ち向かった「長く、粘り強い闘い」に触れていないと言う。
「しかしながら、映画が全てを語ることは不可能だ。そしてラッツィンガーが直面した様々な問題点は、フィルムの主張の根拠となっているものの裏打ちに過ぎない。すなわち、教会と言う組織は、このような犯罪に直面した時にはいつも、どう対応したらいいか分からないものなのだ。」と記事は指摘する。
記事はまたこう指摘する。「子どもは、家庭や学校、スポーツなど、多くの場所において、虐待を受ける弱い立場にある。それなのに、われわれは虐待行為の深刻さよりも、組織の体面の方を気に掛けていたことを、今あきらかにされたのだ。」
「これらの全てをとっても、神の代理者がその地位と権威を利用して、純真な存在を虐待するという深刻な犯罪行為を正当化することはできない。」
この映画は、実際、被害者がこうむった悲惨な状況―「もはや、訴えかけ助けを求める神さえも存在しない状況」を描き出している。
バチカンの弱者保護委員会(the Pontifical Commission for the Protection of Minors:2014/3設置)のメンバーであるイエズス会の司祭ハンス・ゾルナーは、バチカン放送で、多くの司教たちが周囲の人々にこの映画を観るよう勧めたと語った。「司教たちは、この映画の中心的メッセージを真剣に受け止めるよう促しました。すなわち、カトリック教会は透明性と公平さを保ち、虐待行為と闘うことに熱心に取り組むことができるし、またそうしなければならない。それによって、このようなことが二度と起きないことを保証しなければならない、と言うメッセージです。」
カトリックの指導者は、口をつぐんでいれば聖職者の性的虐待が消え去るなどと考えてはならないとゾルナー神父は言う。「それが、中心メッセージの一つだと考える。」
トム・マッカーシー監督は、教皇が「前向きな考えと広い視野を持ち、進歩的で改革指向の人物」であり、性的虐待の悲劇は二度と起こさないと言明したことに感動して、以前こう語っている。「教皇は、一朝一夕には変わらない組織の手綱を制御しようとしているのです。」(2015/11、アメリカ・マガジンのインタビュー)
「他のリーダーと同様に、教皇は組織内で自分にふさわしい仕事をしている。あとは、彼の指導のもとにどれほどの変化が起き、どれほどの行動がなされるかが問題だ。ここから先は見守っていくしかないと思う。」マッカーシー監督はこう語る。 (以上)
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<参考記事:「シネマカフェ 2016/2/29」>
【第88回アカデミー賞】「作品賞」はカトリック教会の一大スキャンダルを描く『スポットライト』!
第88回アカデミー賞授賞式が2月29日(日本時間)、米ロサンゼルスのドルビー・シアターで行われ、カトリック教会の一大スキャンダルに立ち向かった「ボストン・グローブ」紙の記者たちを描いた『スポットライト 世紀のスクープ』が「作品賞」に輝いた。
2002年、アメリカの新聞「ボストン・グローブ」の記者たちが、カトリック教会のスキャンダルを白日の下に晒した。「SPOTLIGHT」と名のついた一面記事に、神父による性的虐待とその事実を看過し続けたカトリック教会の共犯ともいえる関係を取り上げたのだ。彼らの追跡は、教会で長く隠蔽されてきた衝撃的な歴史をつまびらかにし、社会でもっとも権力をふるう人物たちを失脚に追い込むことになる、まさに記者生命を懸けた闘いだった…。
同作は作品賞、監督賞、助演男優賞(マーク・ラファロ)、助演女優賞(レイチェル・マクアダムス)、脚本賞、編集賞6部門にノミネートされ、脚本賞、が受賞している。
『扉をたたく人』で注目を集め、『靴職人と魔法のミシン』(’10)が日本でもスマッシュヒットを記録したトム・マッカーシーが監督を務める本作。俳優陣には、マーク・ラファロ、マイケル・キートン、レイチェル・マクアダムス、リーヴ・シュレイバーらが集結。
この日、ステージに立ったマッカーシー監督は感謝の言葉と共に「この映画は被害者に声をもらいました。その声を拡げてくれるのがこのアカデミー賞です」と語り、キャスト陣と喜びを分かち合った。
http://www.cinemacafe.net/article/2016/02/29/38287.html
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'Spotlight' is not anti-Catholic, Vatican newspaper says
By Carol Glatz Catholic News Service 2.29.2016
VATICAN CITY (CNS) -- The Vatican newspaper said the Oscar-winning film, "Spotlight," is not anti-Catholic.
"It is not an anti-Catholic movie, as has been written, because the film succeeds in giving voice to the alarm and deep pain" experienced by the Catholic faithful when a team of investigative newspaper reporters in Boston revealed the scandal of clerical abuse, said the article published Feb. 29 in L'Osservatore Romano.
The paper said it was also a "positive sign" when Michael Sugar, the movie's producer, said he hoped the film would "resonate all the way to the Vatican."
In his acceptance speech at the 88th annual Academy Awards Feb. 28, Sugar said the movie "gave a voice to survivors, and this Oscar amplifies this voice." He then expressed hopes this voice would "become a choir that will resonate all the way to the Vatican."
"Pope Francis, it's time to protect the children and restore the faith," he said.
The fact there was such an appeal, the Vatican newspaper said, was "a positive sign" because it shows "there is still trust in the institution (of the church), there is trust in a pope who is continuing the cleanup begun by his predecessor."
"There is still trust in a faith that has at its heart the defense of victims, the protection of the innocent," said the article, written by Lucetta Scaraffia, a professor of contemporary history and a frequent contributor to the Vatican newspaper.
"Spotlight" won two awards: one for best picture and one for best original screenplay. The film documents the Boston Globe's investigation into the scandal and cover-up of the sexual abuse of minors by clergy in the Archdiocese of Boston.
The Vatican newspaper said the film does not touch on the "long and tenacious fight" by then-Cardinal Joseph Ratzinger, prefect of the Congregation for the Doctrine of the Faith, in launching action against abusers in the church.
"But a film can't say everything, and the difficulties that Ratzinger encountered only confirm the premise of the film, that is, that too often the church institution did not know how to respond with the necessary determination before these crimes," the article said.
While children are vulnerable to abuse in many other places, like in the family, school or sports teams, it said, "it is now clear that too many in the church were more worried about the image of the institution than the seriousness of the act."
"All of this cannot justify the very grave crime of one, who as a representative of God, uses this prestige and authority to take advantage of the innocent," the article said.
The film, in fact, shows the kind of devastation wrought on victims when "they don't even have a God to plead with anymore, to ask for help," it said.
Jesuit Father Hans Zollner, a member of the Pontifical Commission for the Protection of Minors, told Vatican Radio many bishops had urged others to see the film and "take seriously its central message, which is that the Catholic Church can and must be transparent, just and committed to fighting abuse, and it must ensure it never happens again."
Catholic leaders cannot think clerical sexual abuse will go away if they don't talk about it, Father Zollner said. "I think this is one of the central messages of the film."
Director Tom McCarthy had said that while he's excited the pope is a "forward-thinking, inclusive, progressive, reform-minded person," addressing the scourge of sexual abuse will not occur overnight.
"He's taking over the reins of an institution that does not change very quickly," McCarthy said in an interview with America magazine in November 2015.
"Like any leader, within his institution, he's got his work cut out for him. What remains to be seen is how much change, how much action happens under his guidance. I think you just have to wait and see," McCarthy had said.
http://www.catholicnews.com/services/englishnews/2016/spotlight-is-not-anticatholic-vatican-newspaper-says.cfm