「学び合いの会-海外ニュース」 333号 

 

† 主の平和

 

先月開かれた「家庭シノドス」で、教皇フランシスコは

ひとつ、貴重な収穫を得たと、ナショナル・カトリック・

リポーター誌の記者は分析します。

この記事を仲間の翻訳でお届けします。

 

添付記事

 

1. 「教皇、敵対者をあぶり出す」 (NCR)

 

 

教皇、敵対者をあぶりだす

ロバート・ミケンズ  2015/10/26 NCR 

 

 

シノドスの内側で一体何が起きていたかを本当に知りたいなら、そこで採択された、教会と家庭に関する最終報告書(relatio)の内容にこだわりすぎてはいけない。

94項目にわたる報告書の一節一節は、すべて最終投票に参加した264人の高位聖職者(と、ひとりの信徒)のうちの、少なくとも三分の二の票を得て承認された。このように圧倒的な承認を得られたのは、あらかじめ最も論争を呼びそうな問題をすべて提案から外し、あるいは、その種の問題について断定を避ける表現を用いたからである。

 

それでもなお、対照的な考え方をする(対照的なイデオロギーさえ持つ)カトリック信者が、文書の一節一節を自分たちの都合の良いように解釈し、何とかして自分の陣営の「勝利」を主張しようとしてきた。しかし、その人たちは問題のポイントを見失っているのだ。

 

教皇フランシスコは、12ヶ月の間に2回のシノドスを招集し、全く同じ問題テーマ(教会および現代世界における、家庭の召命と使命)について自由に討論するという、これまでにない決定を下した。その本当の目的は、実は家庭ではなかったのだ。むしろそれは、教会の最高レベルでの議論、対話のプロセスを再び実現することが目的だったのだ。これは第2バチカン公会議直後の数年間を除いて、その後行われなくなったプロセスである。教皇は、10月17日のシノドス50周年を記念するシンポジウムで行った基調演説でその点を強調している。

 

教皇フランシスコは、この二つのプロセス(訳注:臨時と通常の二つのシノドス)の中で、1回目(昨年)のシノドスに関しては、司教たちがカトリック信者の「脈を取る」よう促すことを意図していた。教皇はシノドスの事務局に命じ、会議の数ヶ月前に世界中の全司教宛に先例のないアンケートを送ってこの意図を伝え、結婚、家庭、性に関する教会の教えと実践に対する信徒たちの意見と経験を集めてくるよう促した。

 

先日終わったばかりの2回目のシノドスに関しては、教皇は全く別の考えを抱いていた。今ではそれは大分明らかになったようだ。2回目のシノドスは、教皇が司教たちの「脈を取れる」よう計画されていたのだ。そしてそれは成功した。教皇はある意味で、これまで脈を取らせたことのない司教たちを「あぶり出した」のだ。

 

信じられないだろうか?

 

土曜日の夕方、2回目のシノドスの閉会を前にして、教皇は、司教やオブザーバーたちに、自分が考えるこの会議の目的について語った。

 

その中の一つとして教皇は、「内に隠された心を白日のもとに曝す狙いがありました。多くの場合それは、教会の教えや善意の陰に隠れています。そしてそれは、解決困難な事例や、傷ついた家族を裁くために、ときには権威者として、また時には表面的な関心だけで、モーゼの椅子(訳注:律法、すなわち教会法による法廷)に座ろうとするのです。」

 

教皇フランシスコが、気になる司教たちに注意を払っていたことは疑いない。

 

教皇は、司教たちが、多くの「自由に表明された多様な意見」を通して「豊かで生き生きとした対話」をしたことに感謝する一方で、シノドス参加者の中には「時に、残念ながら完全に善意とは言えないやり方で」発言する人もいたと嘆いた。

 

教皇は、さらに何人かの司教の名前を銘記したに違いない。

 

「このシノドスの経験によってわたしたちは、真に教義を守る人はその一字一句を遵守する人ではなく、その精神を守る人たちであることを良く理解しました。それは、理念でなく人間を、決まり文句でなく無償の神の愛と赦しを信じる人たちです。」と教皇は語った。

 

教皇の小さなブラックリストにさらに付け加える名前はあるのか?

 

教皇フランシスコはまた、今回のシノドスが「広い地平を切り開こうとする試み」であったと語り、続けて……ここで教皇は10人あまりの司教の名を思い浮かべたのだろうか……「神の子らの自由を守り拡大するために、陰謀説と偏狭な考え方を克服することが目的」であったとも述べた。

 

教皇がこのような思いを抱いたのは、シノドスが作成した最終報告を読んだためというよりは、会場で参加者たちと関わりを持って過ごした3週間の経験からであった。

 

ケベックのジェラルド・ラクロワ枢機卿が、先週、記者たちに語ったところでは、教皇フランシスコは、行われている討論の中で「何が重要な点であり、何が困難な点であるか」を承知しているという。教皇はまた、たとえ最終文書には盛り込まれなくても、「それぞれの討議内容の重要度」も承知しているとのことだった。

 

言い換えると、教皇は司教たちをこれまでよりも一層よく知るようになり、今では、教会の刷新と改革の構想を共にして働く人たちと、そうでない人たちとを区別する立場を強めたとも言える。

 

しかし、もしも今回のシノドスに出席した250人の司教たち(シノドス参加者の中には司教以外の人たちも居た)が本当の意味で全世界中の司教職を代表するメンバーだとしたら、教皇フランシスコの前途は多難と言えるだろう。

 

最終報告書のこれらの項目について、表現がかなり弱められていたにも関わらず、三分の一近い司教たちが反対票を投じたという事実は、教会の結婚に関する規定や教えに不満を抱くカトリック信者の意見を受け入れる余地を大きく広げたことを示唆している。

 

さらに不安を呼ぶのは、総会が選出したシノドス常任評議会(the synod's permanent council)の12人のリストである。教皇指名の3人を加え、計15人グループは、次回の通常シノドスの大筋を準備することになる。

 

常任評議会のメンバー選出に際して、総会は、アメリカ大陸(Americas)、ヨーロッパ、アフリカ、アジア・オセアニアから夫々3人を選出するよう求められた。ある報告によれば、フィラデルフィアのチャールズ・シュープー枢機卿が最多得票者であった。シカゴのブレイズ・スーピッチ大司教はアメリカ大陸枠のトップ3人に入っていたが、「一国一人」の選出ルールによって除外された。

(参考: 学び合いの会-海外ニュース329号修正版:「スーピッチ・シカゴ大司教、離婚問題にコメント」)

 

その他の選出メンバーのうち、一般に改革反対派と見做されているのは、ジョージ・ペル枢機卿(バチカン財務事務局長官)、ロバート・サラ枢機卿(典礼秘跡省長官)、マルク・ウェレット枢機卿(司教省長官)、それにウィルフリッド・ネイピア枢機卿(南ア)である。

 

一方、どちらかと言えば改革指向派と見られているのは、ヴィンセント・ニコルス枢機卿(イングランド)、クリストフ・シェーンボルン枢機卿(オーストリア)、オスカー・ロドリゲス・マラディアガ枢機卿(ホンジュラス)、ルイス・タグレ枢機卿(フィリピン)、オズワルド・グラシアス枢機卿(インド)、それにブルーノ・フォルテ大司教(イタリー)である。

 

そして、12番目に選ばれたのはアフリカ・ガボンのマチュウ・マデガ・リブアンキ-ハン

司教(Bishop Mathieu Madega Lebouankehan)であった。

(訳注: Lebouankehan の発音表記に関しては http://www.dict.cc/speak.php による。)

 

教皇フランシスコは、自分の考えに近い3人を(追加)指名したことで、分裂の様相を見せている評議会を統率できるだろう。さらに重要なのは、教皇はこの数週間、ローマで「シノドス参加」の250人ほどの司教たちを観察し、今では彼らの傾向をさらによく読み取れるようになっていることだ。

 

これまでの教皇たちやその最も近い側近は、従来、このシノドスの集会が、教会の将来の指導者を選別するための能力証明の場、あるいは人材のプールであることに気付いてきた。

今回のシノドスで教皇フランシスコは、結果的に司教たちが自分の手の内をさらけ出すよう仕向け、今では、教会刷新の計画遂行に役立つと思われる数多くの司教を、確信を持って選べる有利な立場にいるのだ。

 

教皇は、今回司教たちを知ることが出来たという成果を受けて、今後は、得られる限りすべての助けが必要なことをかみしめているに違いない。

 

(以上)

The pope has smoked out his opposition

Robert Mickens  |  Oct. 26, 2015  NCR

 

If you really want to know what happened inside the Synod of Bishops this past month, don't obsess too much over its final report (relatio) on the church and the family.

Each of that document's ninety-four articles or paragraphs was approved by at least two-thirds of the 264 prelates (and one layman) that showed up for the final vote. And the reason there was such overwhelming approval is because of a delicate compromise that took all of the most controversial issues off the table or treated them with open-ended language.

 

Nonetheless, Catholics of contrasting points of views (and even ideologies) have found ways to claim "victory" for their side through a favorable reading of one passage or another. But they are missing the point.

 

Pope Francis' novel decision to call the synod into session twice in twelve months to speak freely about the exact same issue ("the vocation and mission of the family in the Church and the contemporary world") was primarily not about the family. Rather, it was about re-introducing a process of discussion and debate at the highest level of the church, not seen since the first years immediately following the Second Vatican Council. He confirmed as much in a key address he gave on Oct. 17 during a symposium to mark the 50th anniversary of the Synod of Bishops.

 

In this two-pronged process, Francis intended his first synod gathering (last year) to help the bishops "take the pulse" of the Catholic people. He stimulated this by having the synod secretariat send an unprecedented questionnaire several months earlier to all the bishops of the world, encouraging them to canvas the lay faithful for their views and experience on the church's teaching and praxis regarding marriage, family and sexuality.

 

He had quite another idea for the second synod gathering, the one that just took place. It seems clearer, now more than ever, that it was designed to help him "take the pulse" of the bishops. And it was successful. In a sense, he has "smoked out" those bishops who, up until now, have not shown their hand.

 

Don't believe it?

 

On Saturday evening, as he brought this latest synod assembly's work to a close, the pope told the bishops and observers what he believed the exercise had been about.

 

Among other things, he said: "It was about laying bare the closed hearts, which frequently hide even behind the Church's teaching or good intentions, in order to sit in the chair of Moses and judge, sometimes with superiority and superficiality, difficult cases and wounded families."

 

Francis undoubtedly took note of those prelates he had in mind.

 

And while he thanked the bishops for engaging in "a rich and lively dialogue" through the many "different opinions which were freely expressed," he lamented that some synod participants spoke out "at times, unfortunately, not entirely in well-meaning ways."

 

He surely jotted down the names of a few more bishops.

 

"The Synod experience also made us better realize that the true defenders of doctrine are not those that uphold its letter, but its spirit; not ideas, but people; not formulae, but the gratuitousness of God's love and forgiveness," the pope said.

 

More names to add to his little black book?

 

Francis also said that this latest synod assembly "was about trying to open up broader horizons" and -- here he may have had a dozen or so other bishops in mind -- "rising above conspiracy theories and blinkered viewpoints, so as to defend and spread the freedom of the children of God."

 

The pope forged these impressions not so much from the final report the synod produced but from the three weeks he spent engaged with participants in the hall.

 

As Cardinal Gerald Lacroix of Quebec told reporters last week, Francis knows the "accents and difficult points" of the debates that went on. He also "knows the weight of each argument," even of those that did not make it into the final document.

 

In other words, the pope has gotten to know the bishops much better and is now in a stronger position to distinguish those who are on board with his vision of renewing and reforming the church from those who are not.

 

But if the more than 250 bishops (there were also non-bishop synod fathers) who were at this latest synod assembly are truly representative of the worldwide episcopate, Francis may have a difficult road ahead.

 

Nearly a third of the synod fathers voted against those articles in the final report that, although greatly watered down, hinted at greater openness to accommodating Catholics who fall short of the mark regarding church's marital laws and teaching.

 

And even more alarming is the list of twelve bishops that the general assembly elected to the synod's permanent council. Along with three papal appointees, this group of fifteen will prepare the ground for the next ordinary assembly of the synod.

 

The assembly was asked to choose three men each from the Americas, Europe, Africa and Asia-Oceania. According to one report, Archbishop Charles Chaput of Philadelphia garnered more votes than anyone else. Archbishop Blaise Cupich of Chicago, who was among the top three elected from the Americas, was eliminated because only a single representative is allowed from any one country.

 

Others elected, who are generally described as opponents to change, were Cardinals George Pell (head of Vatican's Secretariat for the Economy), Robert Sarah (prefect, Congregation for Divine Worship), Marc Ouellet (prefect, Congregation for Bishops) and Wilfrid Napier (South Africa).

 

Elected from among those bishops generally seen as more reform-minded were Cardinals Vincent Nichols (England), Christoph Schönborn (Austria), Oscar Rodriguez Maradiaga (Honduras), Luis Tagle (Philippines), Oswald Gracias (India) and Archbishop Bruno Forte (Italy).

 

The twelfth man elected to the permanent council was Bishop Mathieu Madega Lebouankehan (Gabon).

 

Pope Francis will be able to break what appears to be a divided council by appointing three bishops closer to his own thinking. And more importantly he now has a better read of the 250 or so bishops who have been "synoding" in Rome these past few weeks.

 

In the past, popes and their closest aides have found these synod assemblies to be a useful proving ground or talent pool for selecting future Church leaders. After this latest exercise, in which he practically forced the bishops to lay their cards on the table, Pope Francis is in a better position to confidently choose a number of prelates who will be assets in carrying out his agenda for church renewal.

 

He surely realizes that, with the current crop of bishops, he needs all the help he can get.

 

[Robert Mickens is editor-in-chief of Global Pulse. Since 1986, he has lived in Rome, where he studied theology at the Pontifical Gregorian University before working 11 years at Vatican Radio and then another decade as correspondent for The Tablet of London.]

 

http://ncronline.org/blogs/roman-observer/pope-has-smoked-out-his-opposition