「学び合いの会-海外ニュース」 324号 

 

† 主の平和

 

キューバを経てアメリカを初訪問した教皇は5日間の滞在を終え

て、27日夜、帰国の途につきました。同じころ訪米した中国の

習近平国家主席の影がかすむほど熱烈な歓迎を受けた教皇は、

ワシントン、ニューヨーク、フィラデルフィアの各地で多くの言葉

と足跡を残しました。

今回は9月25日、ニューヨークの国連本部総会での演説を伝える

英紙の記事と、教皇の5日間の行動の概要を、仲間がまとめて

くださいましたので添付します。

 

添付記事

1.「権力追求より環境権の尊重を」

    教皇フランシスコ、国連に要求(英ガーディアン紙)

「権力追求より環境権の尊重を」教皇フランシスコ、国連に要求

スザンヌ・ゴールデンバーグ(国連発)、ステファニー・カークガーシュナー(ローマ発)

2015/9/25、 英ガーディアン紙

 

教皇は金曜日(9/25)、国連において、「身勝手で果てしない、権力と物質的豊かさへの渇望」をけん制する力強い演説を行い、弱い人々への公平を求め、環境の権利を支持した。

 

前日、米議会で演説した最初の教皇となるという歴史を作った教皇フランシスコは、この日初めて、人類ばかりでなく、自然も権利を持っていると断言した。

 

「実際に『環境の権利』が存在しているということが正式に言葉にされなければなりません。」と教皇は言う。

環境に対する攻撃は、もっとも弱い人々の権利と生活環境への攻撃であると述べ、もっとも極端な場合には、環境の悪化は人類の生存を脅かすと警告した。

「従って、環境に対して加えられるいかなる危害も、人類に加えられる危害なのです。」と教皇は述べた。「環境保護の危機、そして種の多様性の大規模な破壊は、人類という種のまさにその存在をも脅かす可能性があります。」と教皇は結んだ。

 

ホールに溢れんばかりの聴衆が集まり、演説はスペイン語で行われた。その日は、より持続可能な発展の17の目標を採択する予定の国連会議の前夜であり、気候変動と戦う協定の交渉が大詰めの段階を迎えていた。

 

教皇はアメリカ訪問の第二段階の行程にあり、マンハッタンでは大規模な取り締まりが行われることになった。何ブロックもが通行止めになり、国連の外では、教皇を一目でも見ようと代表団や労働者たちが夜明け前から並んだ。

 

教皇フランシスコの演説の各項目は、明らかに、参列した世界の指導者たちと国連の幹部たちに照準が定められていて、国際社会が差別と貧困問題に取り組むそのレベルをあげるものであった。

 

教皇は、国連の取り組みを称賛する一方で、演説の前の幹部たちとの短時間の会合の間に、事務官、保守要員、その他縁の下の力持ちの労働者たちの名を注意深く挙げ、この組織全体がより高い基準を目指すようにと促した。

 

「人類は、自身の持つ可能性を歯止めなく使用していて」、かりに国連の平和と人権の保護の取り組みがなければ、「人類は、そこを切り抜けて生き延びて来ることはできなかったでしょう。」と教皇は語った。

 

しかし、教皇は、この国際的組織はもっと働くことが必要だと言う。そして、国連は自己満足、すなわち教皇が「無駄話」と片付けていることを止めるようにと忠告した。

称賛されそうな目標の設定だけでは、貧しい人々の問題を解決するには十分ではない。「わたしたちの組織が、これらの貧困問題との戦いにおいて本当に有効な活動を確実に行うようにすることが必要です。」

 

演説は広範囲にわたり、教皇は、最近のイランとの核取引(教皇はこれを「政治的善意の可能性の証明」と評した)にそれとなく言及し、また少女たちの教育を受ける権利を再確認した。聴衆の中には、パキスタンの教育活動家で、2012年にタリバンに撃たれ、重傷を負ったノーベル賞受賞者のマララ・ユスフザイさんの姿もあった。

 

教皇は、名指しではなかったが、国際的な金融機関も批判し、銀行は世界をもっと公平にしていくために改革の必要があると述べた。

 

教皇は、中東のキリスト教徒の迫害に深い懸念を表わした。中東では、キリスト者たちやその他の宗教グループが、「それぞれの礼拝する場所が、そしてそれぞれの文化的、宗教的遺産が破壊されるのを目の当たりにすることを余儀なく」され、死あるいは奴隷状態からのがれるか、さもなければそこに直面せざるを得ない状況に置かれていると述べた。

 

ウクライナ、シリア、イラク、リビア、南スーダン、そしてアフリカ大湖地方を含むあらゆる紛争地域では、「ゲリラがいかに正しかろうとも」、人間が「ゲリラの利益より優先される」ことが肝心であると教皇は語った。

 

教皇がそこにウクライナを含めたことは注目すべきである。なぜなら教皇は、ロシアのウクライナ紛争に対して、十分説得力を持つ批判的発言をしないことで、やんわりと批判されているからである。

 

演説の論調は圧倒的に進歩的であったが、一方で教皇は、中絶に関するカトリックの教義を支持することを明らかにし、「すべての段階にある生命の無条件の尊重」を求めた。そして教皇は、「自然それ自体に定められた道徳律」を引き合いに出し、男性と女性の間にある「自然な相違」を強く主張した。

 

しかし、教皇のもっとも強い言葉は、「このすべての人々(男女)の共通の住み家」を守るために残してあったのだ。

 

教皇は、6月に環境に関する回勅を発表し、自分は、地球規模の貧困、社会の不正義、そして気候変動に対して力強く反発する力となると宣言した。

 

教皇は、その道徳的権威とカリスマで、気候変動を、門外漢には理解しにくい一連の交渉ごとから、道徳的意味を盛り込んだ問題に置き換える手助けをしたのである。

 

6月に180ページにわたる回勅が発表されて、パリで行われる予定の気候変動交渉への準備に気運が高まるのに本当に必要な感覚が注入され、またカトリックと他の宗教グループによって熱心な組織化の試みも始まった。

 

回勅がはっきりさせたのは、教皇は、現在の経済体制のもとでの無制限な資本主義は、貧しい人々、弱い人々の権利を踏みにじり、環境を破壊すると信じているということであった。

 

そのような経済行為は、教皇が「浪費の文化」“culture of waste”と呼ぶものを後押ししてきた。この文化の中では、もっとも貧しい人々ともっとも弱い人々は使い捨て可能なものと見なされているのだ。

 

しかし、回勅は、一人一人の人間、貧しい人々、そして未来の世代に言及しているが、地球それ自体にはそれほどのクレームをつけていない。

 

国連での演説で、教皇はさらに強い言葉を使い、環境は、単に人類生存にとって必要な道具であるばかりでなく、同じ創造物の一要素であり、従って権利を持っていると結論している。

 

「わたしたちキリスト者は、他の一神教の人たちと共に、宇宙は創造主による愛の溢れた決断の実りであると信じています。創造主は人間に対して、仲間の利益のために、また創造主の栄光のために敬意を表して創造物を使うことを許しているのです。人間には、創造物を乱用する権限は与えられていないし、ましてや破壊する権限など与えられていないのです。」

 

「環境を犠牲にしてごらんなさい。そうそれば、当然の結果として、弱い人々や貧しい人々に対する不正義が生まれます。」と教皇は言う。「環境の乱用と破壊が行われる時、それに伴って、排除に向かう情け容赦のない行為が必ず起きるのです。」

 

「権力と物質的繁栄への身勝手で果てしない渇望は、天然資源の乱用と、弱い人々や社会的に恵まれない人々の排除の双方につながっています。」と教皇は述べた。

 

潘基文国連事務総長にとって教皇は、気候変動との戦いで合意に至るための尽力がうまくいかない中での、心強い支持者であることが明らかになった。教皇の演説の後、教皇がパリ会議に斬新な気運を吹き込むことが出来るのではないかと期待していた人々の間に起きた楽観的なうねりは、目に見えるほどにあきらかであった。

 

教皇演説の後、レイチェル・カイト世界銀行副総裁兼気候変動特使は、「結局のところ、話し合うのは人間である。結局のところ、世界の指導たちは人間である」と述べた。

 

「教皇フランシスコは、世界の指導者たちに、貧困を軽減することと環境を保護することは同じ困難な取り組みの一部分であることをもう一度思い出させてくれた。」とグリーンピースは声明の中で述べている。

 

教皇伝記作家の一人、ジミー・バーンズは、国連は「世界でもっとも人気のある精神的指導者として、世界の指導者たちを、言葉を越えた行動の必要性に注目させるために」世界中の聴衆に語りかける重要な舞台を教皇に提供したと語った。

 

バーンズは、「またこれには、安保理の世界の強国への警告が含まれている。彼らは、中東の平和的解決で合意できずにいるのに、西側の主要国とイランの間の原子力協定を、建設的外交関係の模範例として掲げているのだ。」と述べている。

 

(以上)

Pope Francis demands UN respect rights of environment over 'thirst for power'

Suzanne Goldenberg at the United Nations and Stephanie Kirchgaessner in Rome

Friday 25 September 2015 19.30 BST

 

The pope demanded justice for the weak and affirmed the rights of the environment on Friday in a forceful speech to the United Nations that warned against “a selfish and boundless thirst for power and material prosperity”.

 

A day after making history by becoming the first pope to address Congress, Francis for the first time asserted that nature – as well as humanity – had rights.

 

“It must be stated that a true ‘right of the environment’ does exist,” Francis said.

An attack on the environment was an assault on the rights and living conditions of the most vulnerable, he said, warning that at its most extreme, environmental degradation threatened humanity’s survival.

“Any harm done to the environment, therefore is harm done to humanity,” Francis said. “The ecological crisis, and the large-scale destruction of biodiversity, can threaten the very existence of the human species,” he concluded.

 

The speech, delivered in Spanish to an overflowing hall, came on the eve of a UN conference intended to adopt 17 new goals for a more sustainable model of development, and during the last stretch of negotiations on a deal to fight climate change.

 

The pope’s appearance, on the second leg of the pontiff’s tour of the US, prompted a huge security crackdown in Manhattan. Traffic was halted for blocks, while outside the UN, delegates and workers began lining up before dawn to try to get a glimpse of the pope.

 

Sections of Francis’s speech were clearly aimed at the assembled world leaders and UN staff, raising the bar for the international community in tackling injustice and poverty.

 

While praising the UN for its work – Francis took care to mention secretaries, maintenance people and other unsung workers during a brief meeting with staff before the address – he urged the institution to aim for a higher standard.

 

Without the United Nations’ efforts to protect peace and human rights, “mankind would not have been able to survive the unchecked use of its own possibilities”, Francis said.

 

But he said that international institutions needed to do more, counselling the UN against complacency, or what Francis dismissed as “idle chatter”.

The setting of laudable targets on its own was not enough to deal with the problems of the poor. “We need to ensure that our institutions are truly effective in the struggle against all these scourges,” the pope said.

 

In the wide-ranging speech, the pope alluded to the recent nuclear deal with Iran (which he described as “proof of the potential of political goodwill”) and reaffirmed girls’ right to education. Among those in the audience was the Nobel laureate Malala Yousefzai, the Pakistani education campaigner who was shot and injured by the Taliban in 2012.

 

Francis also took a swipe at international financial institutions – though not by name – saying that banks needed to reform to make the world more equitable.

 

He expressed deep concern for the persecution of Christians in the Middle East, where they and other religious groups, have been “forced to witness the destruction of their places of worship, their cultural and religious heritage” and been forced to flee or face death or enslavement.

 

In every area of conflict – including Ukraine, Syria, Iraq, Libya, South Sudan and the Great Lakes region in Africa – Francis said it was essential that human beings “take precedence over partisan interests, however legitimate the latter may be”.

 

Francis’s inclusion of Ukraine is noteworthy because he has been gently criticized for not speaking forcefully enough against Russia’s conflict with Ukraine.

 

Although the speech was overwhelmingly progressive in its tone, Francis also made it clear that he upholds the Catholic church’s doctrine on abortion, calling for the “absolute respect for life in all its stages”. The pope also invoked “moral law written in nature itself” to insist on the “natural difference” between men and women.

 

But his strongest words were reserved for his defence of “this common home of all men and women”.

 

Francis had declared himself a powerful force against global poverty, social injustice and climate change with the release of his encyclical on the environment in June.

 

With his moral authority and charisma, the pope has helped reframe climate change from an arcane set of negotiations into an issue with sweeping moral implications.

 

Publication of the 180-page encyclical in June injected a much-needed sense of momentum into preparations for upcoming climate change negotiations in Paris, and launched a frenzied organising effort by Catholic and other religious groups.

 

As the encyclical made evident, the pope believes that the unrestrained capitalism of the current economic order is trampling upon the rights of the poor and the weak, and destroying the environment.

 

Such economic practices encouraged what he called a “culture of waste” in which the poorest and weakest were seen as disposable.

 

But while the encyclical referred to the rights of individuals, the poor, and future generations, it made no such claims for the Earth itself.

 

In his address to the UN, the pope deployed even stronger language, implying that the environment is not merely a necessary tool for human survival, but an element of the same creation, and therefore in possession of rights.

 

“We Christians, together with the other monotheistic religions, believe that the universe is the fruit of a loving decision by the Creator, who permits man respectfully to use creation for the good of his fellow men and for the glory of the Creator; he is not authorized to abuse it, much less to destroy it,” he said.

 

Sacrifice the environment, and wrongs against the weak and the poor were bound to follow, he said. “The misuse and destruction of the environment are also accompanied by a relentless process of exclusion,” Francis told the UN.

 

“A selfish and boundless thirst for power and material prosperity leads both to the misuse of available natural resources and to the exclusion of the weak and disadvantaged,” he said.

 

For Ban Ki-Moon, the UN secretary-general, the pope has proved a formidable ally in the faltering efforts to reach a deal to fight climate change. After his address, the swell of optimism was almost palpable among those who hope he can inject fresh momentum to the Paris talks.

 

“At the end of the day negotiators are human beings. At the end of the day world leaders are human beings,” said Rachel Kyte, the World Bank’s climate envoy, after the address .

 

“Pope Francis has once again reminded world leaders that alleviating poverty and preserving the environment are part of the same struggle,” Greenpeace said in a statement.

 

Jimmy Burns, a papal biographer, said the UN offered Francis an important platform to address a global audience as “the world’s most popular spiritual leader, and focus the attention of world leaders on the need for action beyond words”.

 

“It also contained an alert call on world powers at the security council for their failure to agree on a peaceful settlement in the Middle East, while holding up the nuclear agreement between the western powers and Iran as an example of constructive diplomacy,” Burns said.

 

 

http://www.theguardian.com/world/2015/sep/25/pope-francis-asserts-right-environment-un