「学び合いの会-海外ニュース」 310号
† 主の平和
カスパー枢機卿はエキュメニカルな対話の停滞を憂え、
「信仰のセンス」という表現を使って、教皇フランシスコ
にエールを送っています。
添付記事
1. カスパー枢機卿語る:
「教皇は、『信仰のセンス』(sensus fidei)に耳を傾ける
統治を望んでいる。」 (NCR)
カスパー枢機卿:
「教皇は、『信仰のセンス』(sensus fidei)に耳を傾ける統治を望んでいる。」
Joshua J. McElwee 2015年5月26日 NCR
ワシントン発:ドイツのワルター・カスパー枢機卿は、教皇フランシスコがカトリックの位階制(教会統治)を再編して、統治側は教会の教えを規定し執行するだけでなく、一般信者が神の意思をどのように理解しているかに耳を傾け、その声に応えることを望んでいると語った。
カスパー枢機卿は著名な神学者で、その著作が教皇フランシスコに影響を与えてきたことでも知られている。彼は教皇が、「(人々の)声を聴く教導職」(listening magisterium)の実現を望んでいると言う。
教皇が大切にする概念は、「信仰のセンス」(sensus fidei)、すなわち信者一人ひとりと、その総体としての教会が、信仰の真理を識別する能力であるとカスパー枢機卿は言う。
カスパー枢機卿によれば、この概念は「第2バチカン公会議によって強調されたものです。…(しかし)今、フランシスコは、それに完全な意味を持たせたいと願っています。」
「教皇は傾聴する教導職と言ったものを求めています。確かにそれは一つの方法です。」と枢機卿は言う。「しかし、その方法を実践するのは、聖霊が教会に何を告げるかを聞いた後のことです。」
「カトリックは…すべてを包含しています。」とカスパー枢機卿は言う。「女性も男性も、老いも若きも、聖職者も一般信徒も…。一般信徒は受け身なだけでなく能動的な存在です。教会の中では、客体(訪問者)であるだけではなく、それ以上に主体(主人)でもあるのです。」
キリスト教一致推進評議会(the Pontifical Council for Promoting Christian Unity)の前長官であるカスパー枢機卿は、土曜日(5/23)、第2バチカン公会議に関する重要な神学者会議の一環として、ワシントン大聖堂で講演を行った。この会議は、同大聖堂とジョージタウン大学、ヴァージニア州アーリントンのメリーマウント大学の共催である。
カスパー枢機卿の他に、5月21日~24日の会議で講演したのは、教皇庁諸宗教対話評議会(the Pontifical Council for Inter-religious Dialogue)の長官ジャン=ルイ・トーラン枢機卿や、カリタスイン・ターナショナル新長官でマニラのルイス・タグル大司教等である。
この会議のテーマは、「第2バチカン公会議・未来の想起:公会議の影響と展望におけるエキュメニズム、宗教間対話、非宗教的思想の問題」であった。教会研究のための国際調査ネットワーク(the Ecclesiological Investigations International Research Network)の集まりであるこのイベントでは、およそ140人の研究者が、公会議の意義と重要性について、また、どのようにしてそのビジョンを推進するかについて検討した。
第2バチカン公会議は、1962年~65年に開催されたカトリック司教たちによる地球規模の会議であり、教会に大きな変化をもたらした。その中には、カトリック典礼の現代化や、教会と現代社会との関係の見直しも含まれている。
土曜午前の集まりは、当初、第2バチカン公会議が、他のキリスト教諸教会とのエキュメニカルな関係にどのような影響を及ぼしたかのヒアリングに焦点が当てられていたが、カスパー枢機卿はここで、過去数10年間のエキュメニカルな取り組みの広範囲にわたる概要を説明した。
ドイツ人枢機卿として、教会における経歴の多くをエキュメニカルな取り組みに費やしてきたカスパー師は、将来、それについての対話が直面すると思われるものの概要を説明し、彼の言う困難を克服する助けとなる四つの視点を示した。
カスパー師は、キリスト教諸教会における「使徒的性格」という包括的な概念を示し、自分のメッセージと、絶えず前進する教会を求める教皇フランシスコの呼びかけとを関係づけた。
「わたしたちは、幾度も、神とその聖霊に思いがけない思いをさせられることがあり、またそうでなければなりません。」とカスパー師は言う。「この意味で、エキュメニズムは静止状態ではなく、動的な状態で起きるのです。水は流れてこそ新鮮さを保てますが、よどんだ状態では腐ってしまいます。」
「使徒の時代(使徒的起源)に回帰する教会は、また未来へ前進する教会でもあります」と枢機卿は言う。
そしてカスパー師は、その前進の概念は「大きな意義」を持つとして、これを「継続性の解釈学」として知られる概念に関連づけた。多くの公会議枢機卿と教皇ベネディクト16世が好んで用いたこの概念は、第2バチカン公会議がそれ以前の教会の教えや伝統を廃止するものではないということを強調している。
「この概念は、使徒的起源の連続性という主題を形成しているから、エキュメニカルの視点から見て大きな意義があると思われます。」とカスパー枢機卿は言う。「それは、わたしたちの教会にとっては基本的なことですが、諸教会にとっては変革を喚起するものです。」
「継続性の解釈学は、未来、すなわちキリスト教を維持するために、常に改革の解釈学でければならなりません。」とカスパー師は言う。
カスパー師はまた、カトリック教会のエキュメニカルな発言は常に対話を強調してきたと言い、それは相互の傾聴を伴うと語った。
「『対話』という言葉が意味するのは、位階的思考ではなく、縦横に交わる思考です。」と枢機卿は言う。「それは、進んで他の人たちを尊重し、共通性を模索し、創造力豊かな協力関係を互いに学び合うプロセスを伴うものでなければなりません。」
カスパー師は、教皇フランシスコがキリスト教諸教会の存在をどう見ているかについて話し、こう述べた。「全体は部分より偉大であり、それ故に、部分の総和ではないのです。」
「教皇にとって、彼が提案するものはいわば多面体のプリズムです。そこではすべての部分が全体を形作っていますが、そのすべての部分は、それぞれの方法で全体に参加しているのです。」と枢機卿は言う。「そして、まさにすべての部分が、それぞれの特性を保ちながら…全体の美しさに貢献しているのです。」
今回の会議は、教会研究のための国際調査ネットワークの第9回大会であった。これは神学者の地球規模のネットワークであり、ジョージタウン大学のジェラルド・マニオン教授が共同設立者としてリードしている。これまでインド、ベルギー、イギリスで大会が開かれてきた。
会議の他の演説では、様々な分野から意見が出された。演説者の中には、高名な倫理神学者チャーリー・カラン神父、アメリカ・カトリック神学者協議会(Catholic Theological Society of America presidents)の前会長 Richard Gaillardetz 、M. ショーン・コープランド、南スーダン司教 Eduardo Hiiboro、ナイジェリアのイエズス会士Agbonkhianmeghe Orobator 神父が居た。
金曜日、タグル大司教はカトリック信者に向けて、第2バチカン公会議以前の教会をノスタルジックな感覚で懐かしむことをやめ、現代世界に開かれた公会議のセンスを身につけて、実践するよう呼びかけた。
「多くの人々は、ノスタルジアと共に理想化された過去の中でキリストを証ししたいと望んでいる。」と大司教は言う。「だがそれは違う。わたしたちは今ここで、この世界に生きている場所で、キリストの証人(あかしびと)になるのです。」
カスパー枢機卿も、エキュメニカルな対話に焦点を当てて「現実的なエキュメニズム」を求めている。それはアカデミックな神学的議論に限定されないと言う。
「教会の一致と人類の一致とは、今日、運命的に織り合わされているのです。」とカスパー師は言う。「それ故、キリスト者の間にある分裂を認めないことは、私たちに課せられた聖なる責務です。」
「教会内にある分裂は罪深い構造です。それは神の救いのご計画を妨げています。」と枢機卿は言う。「それはキリストの身体に刻まれた深い傷であり、咎はすべての側にあるのです。」
枢機卿は、第2バチカン公会議以来行われてきた対話についてこうコメントする。「従来の宗派間の仲違いを経験してきた人は、だれもが、この数十年間の進展のすべてに驚きを禁じ得ないし、それには限りない感謝を覚えています。」
「わたしたちは、溝を乗り越え、その上に橋を架けることが出来ました。その橋を通って、人々は互いに出合うことができます。」
しかし、対話の数十年を経てもなお、エキュメニカルな対話は危険に満ちた段階にあると枢機卿は語る。
「合意はどこにも見えていません。これはたいへん危険な状況です。もし、わたしたちが今どこに居て、どこへ行こうとしているのかについて合意出来ない場合、わたしたちが違う方向に散り散りになってしまう大きな危険をはらんでいます。」
「公会議によって生まれた大きな期待は、未だに期待のままで留まっています。」と枢機卿は言う。「わたしたちは立ち止ったままなのです。」
「今必要なのは、愛のエキュメニズム、出合いのエキュメニズム、傾聴のエキュメニズム、そして友情のエキュメニズムです。」
カスパー枢機卿は、話の最後に今は亡きドイツ人イエズス会士のカール・ラーナー神父の言葉を引用した。ラーナー師は、公会議は「始まりの始まりに過ぎない。」と言っていた。
「現教皇の就任によって、公会議精神の受け容れの新たな段階が始まっています。」とカスパー師は語った。
[Joshua J. McElwee is NCR Vatican correspondent. His email address is jmcelwee@ncronline.org. Follow him on Twitter: @joshjmac.]
Cardinal Kasper: Francis wants a hierarchy that listens to 'sensus fidei'
Joshua J. McElwee | May. 26, 2015 NCR
WASHINGTON: Pope Francis wants to retool the Catholic hierarchy so that it not only defines and enforces church teachings, but also listens and responds to how laypeople understand God's will, German Cardinal Walter Kasper said.
Kasper, a noted theologian whose writings are known to have influenced Francis, said the pope wants to create a "listening magisterium."
Kasper said one concept important to the pope is that of the sensus fidei, or the capacity of individual believers and the church as a whole to discern the truths of faith.
That concept, Kasper said, "was emphasized by the council ... [but] Francis now wishes to give it complete meaning.
"He wants a listening magisterium -- that makes its position, yes," the cardinal said, "but makes its position after it has heard what the Spirit says to its churches."
"Catholicity includes ... all," Kasper said. "Women and men, young and old, clergy and laity. The laity are not only recipients, but also actors. Not only objects, but much more, subjects in the church."
Kasper, the former president of the Pontifical Council for Promoting Christian Unity, spoke Saturday at Washington's National Cathedral as part of a landmark theological conference on the Second Vatican Council co-hosted by the cathedral, Georgetown University, and Marymount University in Arlington, Va.
Among other speakers at the May 21-24 conference were Cardinal Jean-Louis Tauran, the president of the Pontifical Council for Interreligious Dialogue, and Cardinal Luis Tagle, the archbishop of Manila and new president of Caritas Internationalis.
The conference was titled: "Vatican II, Remembering the Future: Ecumenical, Interfaith and Secular Perspectives on the Council's Impact and Promise." A gathering of the Ecclesiological Investigations International Research Network, the event saw an estimated 140 academics reflect on the meaning and import of the council and how its vision might be carried forward.
The Second Vatican Council was a 1962-65 global meeting of Catholic bishops that led to significant changes in the church, including modernization of the Catholic liturgy and redefining the relationship between the church and the modern world.
At a morning session Saturday that was focused primarily on hearing how Vatican II affected ecumenical relations with other Christian churches, Kasper gave a wide-ranging overview of ecumenical efforts of the past decades.
The German cardinal, who has spent much of his church career on ecumenical efforts, also outlined what he sees as problems facing such dialogues in the future and gave four perspectives he said might help overcome difficulties.
Proposing an overarching concept of apostolicity for Christian churches, Kasper related his message to the call of Francis for a church that continually goes forth.
"Again and again, we can and must allow ourselves to be surprised by God and his spirit," he said. "In this sense, ecumenism occurs not in standing still, but in moving on. Only water that flows remains fresh, while standing water turns bad and becomes stale."
"A church that goes back to its apostolic origins goes also forwards to the future," he said.
Kasper then said that concept of going forth has "great significance" and related it to a concept known as the "hermeneutic of continuity." That concept, embraced by many Vatican cardinals and Pope Benedict XVI, stresses that Vatican II did not repeal earlier church teachings or traditions.
"Ecumenically, this concept, it seems to me, to be of great significance since it frames the subject of continuity with the apostolic origins," Kasper said. "It is fundamental for our churches but evokes among the churches a conversion."
"The hermeneutic of continuity must -- for the sake of the future, the sustainability of Christianity -- always be a hermeneutic of reform," he said.
Kasper also said ecumenical language in the Catholic church has always stressed dialogue, which he said involves reciprocal listening.
"What [dialogue] signifies is not hierarchical thinking, but cross-thinking," the cardinal said. "It is to be open to value the others, seeking communalities, and entering into a reciprocal learning process in creative collaboration."
Speaking of how Francis sees the value of the different Christian churches, Kasper said: "The whole is greater than the parts and is therefore not the sum of the parts."
"For him, the mode he proposes is a ... a multifaceted prism, in which all parts form a whole, but they participate in the whole in different ways," he said. "And it is precisely because they maintain their uniqueness that they contribute to the ... beauty of the whole."
The conference was the ninth for the Ecclesiological Investigations International Research Network, a global network of theologians co-founded and led by Georgetown professor Gerard Mannion. It follows previous events in India, Belgium and England.
Among others speaking at the conference, which saw a diverse range of viewpoints: noted moral theologian Fr. Charlie Curran; former Catholic Theological Society of America presidents Richard Gaillardetz and M. Shawn Copeland; South Sudan Bishop Eduardo Hiiboro; and Nigerian Jesuit Fr. Agbonkhianmeghe Orobator.
On Friday, Tagle called on Catholics to avoid looking to the pre-Vatican II church with a sense of nostalgia and to instead embrace and live out the council's sense of openness to the modern world.
"Many people want to witness to Christ in some idealized past that they long for with nostalgia," he said. "No, we witness to Christ now, here, where we are in our world."
Focusing on ecumenical dialogue, Kasper also called for a "down-to-earth ecumenism" that is not limited to only academic theological discussions.
"The unity of the church and the unity of humanity are fatefully interwoven today," Kasper said. "Therefore, it is our sacred duty ... that we do not accept the division between Christians."
"The divisions within the church are ... structures of sin. They thwart God's plan for salvation," he said. "They are deep wounds in the body of Christ and the blame lies ... with all sides."
Commenting on the dialogues that have taken place since the council, Kasper said: "Anyone who has experienced the previous denominational estrangements ... can only be amazed on all that has grown in the last decades ... and be infinitely thankful for it."
"We have succeeded in building bridges out of the trenches ... through which people can encounter one another," he said.
But even after decades of dialogue, Kasper said, the ecumenical dialogues are at a perilous point.
"Agreement is nowhere in sight," he said. "This situation is extremely dangerous. If we are not in agreement of where we are and going, there is a great danger that we will disperse in different directions."
"The great expectations following the council have not been followed," he said. "We are at a standstill."
"An ecumenism of love, of encounter, of listening and friendship are what is needed."
Kasper ended his talk by quoting the late German Jesuit Fr. Karl Rahner, who said the council "was only the beginning of a beginning."
"With the current pontificate, a new phase of its reception has begun," he said.
[Joshua J. McElwee is NCR Vatican correspondent. His email address is jmcelwee@ncronline.org. Follow him on Twitter: @joshjmac.]
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