「学び合いの会-海外ニュース」 308号

† 主の平和

第2バチカン公会議を受けたムーブメントは世界各地で

見られますが、公会議直後から活動を始めたアメリカの

CTU (Catholic Theological Union )の記事を仲間の翻訳で

ご紹介します。

添付記事

1. 第2バチカン公会議の精神、50年を経て実を結ぶ(NCR)

以上

第2バチカン公会議の精神、50年を経て実を結ぶ

トーマス C. フォックス 2015/5/1  NCR(ナショナル・カトリック・リポーター誌)

 

シカゴ発: 第2バチカン公会議の影響は、50年の時を経て、ちょうど伝説の池に落ちた小石のように静かに波紋を広げている。

 

その見事な例を水曜日(4/29)に見ることができた。その日、カトリック神学連合(CTU:the Catholic Theological Union)の460人の支援者と仲間が、年次役員夕食会に集まった。

 

CTUは1968年、現代化=アジョルナメント(刷新)という公会議の精神に触発されたフランシスコ会、御受難会、聖母のしもべ会の三つの修道会が、それぞれの神学校を閉鎖して合流し結成された。三つの神学校は協力の新しい形をとり、そのリソース、すなわち図書館、教授陣、職員、財政を共有することになった。さらに神学生たちは、シカゴ大学に近い郊外のハイド・パークに移転した。

 

エキュメニズムという公会議の精神に従い、CTUはシカゴのプロテスタント神学校の隣に設置された。これは画期的なことであり、まさに公会議文書が求めた現代世界に適合する教会である。

 

間もなくCTUは、修道女や信徒たちを入学させるようになった。これも前例のない事だった。授業は関わりを重んじる神学を大切にした。神学者たちは学問の象牙の塔を後にして、シカゴの町に出た。そこでは、貧しい人らが子供を育て家庭に生き甲斐を見出していた。

 

第2バチカン公会議は地球規模教会という考え方の先駆けとなった。それは非西欧文化を尊重し、信者の共同体を何よりも地域に根差したもの考える教会である。CTUの修道会は、この非常に新しくて包括的な教会に呼応し、そのためのパン種となることになったのだ。同時にCTUは国際留学生にも門戸を開き、間もなく世界中から学生が集まってきた。今日、CTUの学生の40%がアメリカ以外の出身者である。そして今や4000人もの卒業生が世界60カ国で働いている。

 

わたしは、南ミシガン通りのヒルトンホテルで開催された、学校理事会(財務担当者)の夕食会に出席する機会を得た。わたしは早速、何十年もの歳月を教育とCTUの宣教使命に献げてきたCTUの教授たちと膝を交えることになった。彼らは、第2バチカン公会議の正義の呼びかけを実現してきた人々である。

その中から古参数名の名を挙げるとすれば、旧約聖書研究の名誉教授である聖アグネス修道会のシスターのDianne Bergant、社会倫理学の教授でCTUのカトリック・ユダヤ教研究カリキュラムの指導者である聖母マリアのしもべ会のJohn Pawlikowski神父、そして前CTU校長で、最近総長に指名された御受難会のFr. Donald Senior神父である。それぞれが第2バチカン公会議の精神を身にまとい、聖書の講義であろうと、他宗教へアプローチの変革であろうと、それぞれの専門分野に応じて、何世代もの学生たちの意識を形作ってきたのである。

 

このプログラムは毎年、平和・正義・和解・奉仕というCTUの価値観に貢献した個人に栄誉を贈ってきた。今年も例外ではない。医者で人類学者のポール・ファーマー(Paul Farmer)には「平和をもたらす者は幸いである賞(Blessed are the Peacemakers Award)」が贈られ、ロバート&シェイラ・バーナー夫妻とその子供たち(Robert and Sheila Berner and their children)にはその模範的奉仕に対し「奉仕賞(Diakonia Award)」が贈られた。

訳注:Diakoniaは聖書に出てくる「奉仕」「仕える」などを意味する言葉

 

公会議とそこから生まれた力が、これらの受賞者の生き方を形成してきたことが分かる。

 

ハーバード大学医学大学院地球保健社会的医学(Global Health and Social Medicine)学部の学部長であるファーマーは、健康、人権、そして社会的不平等の医学的影響の問題について、広範囲にわたる論文を書いてきた。

 

「さほど重要でないいのちがあるという考え方が、地球上のすべての悪の根底にある。」と彼は言う。

 

1987年、彼はPIH(健康パートナー:Partners In Health)を共同設立し、ハイチの山岳地帯の中央高原地方の住民に医療支援の手をさしのべている。1993年には、マッカーサー基金から「天才賞(genius grant)」を授与され、そのお金を使って、PIHの研究と支援運動機関である健康と社会正義のための研究所(the Institute for Health and Social Justice)を設立した。

 

2002年、ハイチのPIHプロジェクトは、エイズ・結核・マラリアと闘うための世界基金から初めて資金調達を受けたグループの一つになった。PIHは現在、アフリカの6カ国以上に及ぶ最貧地域で医療支援を行っている。PIHは、医療支援を基本的人権と見なし、公会議直後の1968年にラテン・アメリカの司教団によりコロンビアのメデジンで初めて表明された「解放の神学」に基づいて、「貧しい人々の優先的選択」という独自の宣言を行っている。

 

ファーマーは、デューク大学を経てハーバード大学医学大学院を卒業した。それぞれの学位を習得する間にハイチに出かけ、そこで貧しい人々の中に自分の場所を見つけ始めた。彼が語ったところによると、ハイチでの先鋭的な経験は、第2バチカン公会議によって進んだ考え方を身につけた修道女に一歩踏み出す勇気を与えられたためという。また彼は、ハイチ情勢を報道するNCRの、現在進行形の掘り下げた記事を読むことで(自分の思想が)深められたと言う。言うまでもなく、NCRは公会議の結果生まれたもので、1964年、独立したジャーナリズムを支持し、自分たちの教会に関する公正なニュースを知る権利を信じる、信徒のジャーナリストによって創立されたものだ。

 

ファーマーは、特別に影響を受けた人が二人いると語る。一人はエルサルバドルのオスカル・ロメロ大司教で、1980年に暗殺された。もう一人は、解放の神学の創設者であるグスタボ・グティエレス神父である。ファーマーは、最近、「貧しい人々と共に:Dr. ポール・ファーマーとグスタボ・グティエレス神父の会話」(In the Company of the Poor: Conversations with Dr. Paul Farmer and Fr. Gustavo Gutierrez)を出版し、その中で自身の医学の枠組みを解放の神学の内に求めている。

 

ファーマーがCTUの集会で話す前に、ロバート・バーナーが演説をした。ノートルダム大学、ハーバード大学法科大学院の卒業生であるバーナーは、自分の短所を認めるたしなみを持った人物だ。彼はいわゆる血統書付きの弁護士で、革新的な事件に出会ったことも、差別された人々を個人的にかばったこともない。彼の両足は家族への愛と教会への愛の上にしっかりと立っており、またそれ故、彼は奉仕し、教え、導くための堅固な舞台をシカゴに与えられた。

彼は、CTUの生涯理事(life trustee)であり、バーナーディン・センター(Bernardin Center)諮問委員会のメンバーである。このセンターは、1997年に設立され、和解、調停、統率力の育成する場になっている。彼は、LINK Unlimited(無限の輪)の前理事長で、これはアフリカ系アメリカ人の学生に教育の門戸を開く組織である。カトリック異人種協議会(the Catholic Interracial Council)の前理事長であり、また法的援助協会(the Legal Aid Society)の前メンバーでかつ前議長でもある。そのリストは更に続く。

 

家族を代表して賞を受け取った彼は、まず聴衆に向かい「何故CTUがこの栄誉をわたしに与えたのか分かりません。」と述べた。それから誇らしげに妻と子供たちを見て、「なる程、分かりました。」と言った。彼の子供たち、ジョン・バーナー、メアリー・バーナー、ロバート・バーナー3世、ルイーズ・バーナー-・ホルムバーグ、そしてシーラ・バーナー・ケネディーは、両親から教えられた価値観を生き抜いている。賞には「それぞれの家族が、その慈善活動やボランティア活動を通して多大な貢献をし、共通善に役立とうと務める共同体や組織を高揚させることを求めてきた。」と書かれている。

 

第2バチカン公会議は、歴史の中の単なる一つの出来事ではない。これは教会の新しい在り方を示すものであったし、また今でもそうだ。奉仕と癒しの教会であるための真に革新的な道程は、今、教皇フランシスコの在位の下で深められ、時と共に力を増して、5年前の公会議ではまだ明確にイメージされていなかった、正義と慈しみとに固く結びついた形で現れようとしている。

 

 

 

 

After 50 years, Vatican II shaping lives

Thomas C. Fox  |  May. 1, 2015  NCR 

 

CHICAGO - Just like the pebble dropped on the proverbial pond, the effects of the Second Vatican Council ripple outward and down through generations 50 years later.

 

A rich example could be seen here Wednesday, when 460 supporters and friends of the Catholic Theological Union gathered for its annual Trustee Dinner.

 

CTU was founded in 1968 when three religious orders -- Franciscans, Passionists, and Servites -- inspired by the council's spirit of aggiornamento (renewal) decided to close their individual seminaries and join together as one. They would share resources -- libraries, professors, staff, and finances -- in a new model of collaboration. Furthermore, their seminarians would move out of rural isolation and into an urban neighborhood, Hyde Park, near the University of Chicago.

 

To ensure the council's spirit of ecumenism, CTU would become neighbor to Chicago's Protestant seminaries. This was revolutionary. This was the church adopting to the modern world, just as the council documents called for.

 

Soon, CTU was enrolling women religious and the laity. This, too, was unprecedented. Classes stressed a theology of involvement. Theologians were leaving their academic ivory towers for the streets of Chicago, where the people, including the poor, struggled to raise families and find meaningful lives.

 

Vatican II ushered in the idea of a global church, one that respected non-Western cultures and saw communities of believers as primarily local. These communities were to interact with and become the leaven for this widely new and inclusive church. Similarly, CTU opened its doors to international students, and soon they were coming from all over the world. Today, 40 percent of CTU students come from outside the U.S. It boasts 4,000 graduates working in 60 countries.

 

I had the opportunity to attend the Trustee Dinner, a school fundraiser, held in the downtown Hilton on South Michigan Avenue. Soon, I was elbow-to-elbow with CTU faculty who have given decades of their lives to education and living out the CTU mission. They have embodied Vatican II's justice call. To mention a few of the longtimers: Sister of St. Agnes Dianne Bergant, professor emerita of Old Testament studies; Servite Fr. John Pawlikowski, professor of social ethics and director of CTU's Catholic-Jewish Studies Program; and Passionist Fr. Donald Senior, former CTU president who was recently named chancellor. Each has embodied Vatican II ideas, whether it has been teaching Scripture or changing the way we approach other religions, throughout his or her professional life, shaping the minds of students over generations.

 

As it does each year, the program called for the honoring of individuals who exemplify CTU values of peace, justice, reconciliation and service. This year was no exception: CTU honored physician and anthropologist Paul Farmer with its Blessed are the Peacemakers Award and Robert and Sheila Berner and their children with its Diakonia Award for exemplary service.

 

The council and forces it unleashed, it turns out, shaped the lives of these awardees.

 

Farmer, chairman of the Department of Global Health and Social Medicine at Harvard Medical School, has written extensively on issues of health, human rights and the medical effects of social inequality.

 

"The idea that some lives matter less is the root of all that's wrong with the world," he said.

 

In 1987, he co-founded Partners In Health (PIH) to deliver health care to the residents of Haiti's mountainous Central Plateau region. In 1993, he was awarded a "genius grant" from the MacArthur Foundation and used the money to establish the Institute for Health and Social Justice, PIH's research and advocacy arm.

 

In 2002, the PIH project in Haiti became one of the first to receive funding from the Global Fund to fight AIDS, tuberculosis and malaria. PIH now provides health care in some of the poorest regions of Africa, in more than a half dozen countries. It sees health care as a basic human right and claims its own unique "preferential option for the poor" using liberation theology first articulated in 1968, just after the council, by the Latin American bishops in Medellin, Colombia.

 

Farmer graduated from Duke University and later from Harvard Medical School. Between gaining those degrees, he went to Haiti, where he began to find footing among the poor. His Haitian radicalization experience, he told me, came after being encouraged to take the step by women religious radicalized by Vatican II. It was deepened, he said, by reading NCR's ongoing, in-depth Haitian coverage at the time. NCR, of course, was a council product, founded in 1964 by lay journalists who believed in independent journalism and the right of readers to unfettered news about their church.

 

Farmer said two men had a particularly formative influences on him: Salvadoran Archbishop Oscar Romero, who was killed in 1980, and the founder of liberation theology, Fr. Gustavo Gutierrez. Farmer recently published In the Company of the Poor: Conversations with Dr. Paul Farmer and Fr. Gustavo Gutierrez, in which he credits liberation theology for setting is own medical framework.

 

Before Farmer spoke to the CTU gathering, Robert Berner addressed the group. A Notre Dame and Harvard Law School graduate, Berner is as accomplished as he is self-deprecating. He is a pedigree attorney who has never met a progressive cause or marginalized person he didn't personally take under his wing. His two feet are planted solidly in love for family and love for his church, and this has given him a solid Chicago platform to serve, teach and lead. He is a CTU life trustee and a member of its Bernardin Center advisory board. Founded in 1997, the center fosters reconciliation, peacemaking, and leadership development. He is former president of LINK Unlimited, which opens educational doors to African-American students, and of the Catholic Interracial Council, as well as former member and chair of the Legal Aid Society. The list goes on.

 

As he accepted the award on behalf of his family, at first he told the audience he didn't understand why CTU had chosen him for the honor. Then, looking proudly at his wife and children, he said he "got it." His children, John Berner, Mary Berner, Robert Berner III,; Louise Berner-Holmberg, and Sheila Berner Kennedy, are living out the values their parents taught them. The award notes that "each has made significant contributions through their philanthropy and volunteer work, seeking to uplift communities and organizations which endeavor to serve the common good."

 

Vatican II, then, was not simply an event in history. It was and is a new way of being church. This radically new way of being a service and healing church, now enhanced in the Francis pontificate, is gaining momentum over time, shaping lives doggedly committed to justice and mercy only vaguely imagined at the council five decades ago.

 

 

http://ncronline.org/blogs/ncr-today/vatican-ii-lives-catholic-theological-union